いざ〝チャレンジ〟の漁へ 「第八三笠丸」が大船渡出港 公海サンマ漁が本格化(別写真あり)

▲ 公海でのサンマ漁に向けて出港した「第八三笠丸」

 大船渡市赤崎町の鎌田水産㈱(鎌田仁社長)が所有する「第八三笠丸」(199㌧、清枝光臣漁労長)が30日、北太平洋公海でのサンマ漁に向け、大船渡を出港した。従来は8〜12月までとされてきたサンマ漁だが、省令改正に伴って通年での操業が可能となった。漁模様や国内需要は不透明となっており、〝チャレンジ〟の漁となりそうだ。同船は、早ければ6月20日すぎにも大船渡市魚市場にサンマを初水揚げする見通し。

 

 省令改正を受け、全国さんま棒受網漁業協同組合(全さんま)は今月1日〜7月20日を操業期間に自主設定。宮城、岩手両県や北海道などの計18隻が出漁し、9隻ずつ2グループに分かれて交代で操業する。漁獲したサンマは洋上でロシアの加工母船に販売し、販売後は漁模様を見ながら操業して一部日本国内にも水揚げされる。
 「第八三笠丸」は第2グループとして出港。6月初めに第1グループと交代して操業、洋上販売する。
 同船が接岸した大船渡町の市魚市場にはこの日、乗組員の家族、関係者ら約100人が集まった。18人の乗組員を乗せ、カラーテープをなびかせながら船が岸壁から離れると、家族らは航海の無事を祈りながら手を振り続けた。
 清枝漁労長(76)は「今のところ漁況はよくない。どれだけの魚がいるか分からないが、期待感を持ってやるしかない」と話していた。
 ロシアでは平成27年6月、「ロシア連邦の200海里水域(排他的経済水域)における流し網漁を禁止する法案」が成立。日本の漁船も28年1月から、サケ・マス流し網漁ができない状況となっている。
 これに伴い、代替漁法の一環として同年から30年まで、全さんまなどが国の補助を活用した、3年間の「北洋サケ・マス流し網漁業の代替漁業(公海さんま棒受網漁業)」を実施。鎌田水産など、同水域でサケ・マス漁を展開していた国内の漁船が収益性の確保を実証する試験操業に臨んだ。
 全さんまによると、30年度の試験操業は5月1日から7月31日まで実施。国内の100㌧以上船10隻が参加した結果、漁獲量は8721㌧、金額は6億8823万円。このうち、ロシア加工船への洋上売魚引き渡し量は8615㌧、引き渡し金額は6億7147万円だった。
 今年から本格化した公海でのサンマ漁。近年、不漁が深刻化していることを踏まえ、漁獲量の確保や、公海上でサンマを「先取り」する諸外国船への対抗などを図ろうとの狙いがある。
 ただ、サンマは広く「秋の味覚」として親しまれており、国内でどの程度の需要が見込まれるかも不透明で、主要魚市場では魚体組成や需要などを見極めつつ受け入れ体制を構える方針。
 鎌田社長は「もうかる、もうからないではなく、新たなことをやるにはリスクをとらなければならない。消費者に通年でサンマを食べてもらえるようチャレンジしていく」と話していた。