元市職員らに有罪判決 簡水事業の贈収賄事件で 大船渡
令和元年5月31日付 1面
3年の執行猶予付き
大船渡市が発注した簡易水道事業の業務委託を巡る贈収賄事件の第3回公判が30日、盛岡地方裁判所で開かれた。加藤亮裁判長は、収賄の罪で懲役1年6カ月などを求刑された元大船渡市職員に懲役1年6カ月、執行猶予3年と追徴金30万円を、贈賄の罪で懲役1年を求刑された同市の建設会社役員に懲役1年、執行猶予3年を言い渡した。
判決を受けたのは、元市総務部付技監・亘理義政被告(56)=赤崎町字蛸ノ浦24=と、㈱佐々忠代表取締役・佐々木秀光被告(51)=猪川町字冨岡115の1。
起訴状などによると、亘理被告が市都市整備部簡易水道事業所技監だった昨年9月、市が随意契約で発注した本郷浄水場ろ過池砂上業務など3業務の委託業者選定等に関し、佐々忠に便宜を図った謝礼などとして、佐々木被告から現金30万円の供与を受けた。
両被告は今年1月に逮捕され、起訴後に開かれた3月の初公判では、それぞれ起訴事実を認めた。今月8日の第2回公判では、検察側が「犯行は常習的であり、その経緯などは悪質なもの。刑事責任は重大」として、金銭を要求していた亘理被告に懲役1年6カ月と追徴金30万円を、佐々木被告には懲役1年を求刑していた。
第3回公判で加藤裁判長は、「市の簡易水道施設の維持管理業務の一部を、不正な方法で優先的に佐々忠に受注させる運用を繰り返しており、本件は常態化した不正な業務発注に絡む贈収賄事件」と述べ、亘理、佐々木両被告の量刑理由を説明。
亘理被告には、「遊興費欲しさに現金を要求し、収賄におよんだもので、その意思決定は強い非難に値する。本件で授受された現金は高額とはいえないが、常態化した不正な業務発注の一部への対価であることからすれば、市民の市政に対する信頼への裏切りは強い」と指摘。
佐々木被告には「優先的な業務発注の便宜を失うことを恐れて現金の要求に応じたのであり、動機にくむべきものはない。公共事業の指名競争入札に関する虚偽公文書作成などの前科があり、この種の犯罪におよぶことのないよう要請されていたことを踏まえれば、本件におよんだ意思決定への強い非難は免れない」と述べた。
そのうえで、「本件の犯情は悪質というべきであって、両被告の刑事責任は重い」と強調。一方で、「亘理被告には前科がなく、佐々木被告の前科も相当古いものであること、両被告が一応反省の弁を述べていること、両被告の妻が今後の監督を誓約したことなどの事情もある」として、執行猶予を与える判断に至ったとした。
公判後、亘理被告の弁護人である千田實弁護士(一関市)が報道陣の取材に応じた。
千田弁護士は、控訴をしない意向を示したうえで、「今回の判決は、私も亘理氏本人もありがたいと受け止めている。亘理氏からは、『市民の皆さまには、大変ご迷惑をおかけした』と伝えてほしいと言われた」と語った。
「全力で市民の信頼回復を」 戸田市長がコメント
大船渡市は、同日の定例記者会見冒頭で判決内容を報告。戸田公明市長は、「市としては、このたびの不祥事の重大性をしっかりと肝に銘じ、市議会からいただいた申し入れ等を踏まえつつ、市独自に策定した業務改善策を講じながら、引き続き、外部の有識者からなる第三者委員会において検証を進めるなど、今後とも全庁を挙げて再発防止に努めたい。市政に対する市民の皆さまからの信頼回復に、全力で取り組んでいく」と述べた。