事業所の求人受理スタート 来春の高卒予定者対象 初日は31件90人に 大船渡職安

▲ 新規高卒予定者の求人受け付け初日に手続きに臨むゆわて吉田工業の担当者

 来年3月の新規高校卒業予定者を対象とする事業所の求人受け付けが3日、全国の公共職業安定所で一斉に始まった。東日本大震災の復興需要は落ち着きを見せてきたものの、少子化もあいまって求職者側の「売り手市場」傾向が続く気仙地区では同日、大船渡職安(中村剛裕所長)に事業所の担当者が足を運び、自社や地域の発展に向けて若い力の確保へ意欲を見せていた。

 

新戦力確保へ企業躍起

 

 新規高卒予定者を対象とした職安の求人受け付け開始日は一昨年から6月1日となっている。今年は土曜日となったため、3日が初日となった。
 同日、大船渡職安には31件90人の求人があった。昨年初日の48件188人に比べて15件98人下回り幾分落ち着きを見せるも、企業の採用意欲の高さが表れた。
 このうち、大船渡市立根町の製造業、ゆわて吉田工業㈱(吉田重雄代表取締役社長、従業員117人)は、製品検査員として3人の採用を計画。午前中のうちに浅川均管理部長(66)が職安に足を運び、手続きを済ませた。
 同社は市の誘致企業として平成2年に大船渡町に工場を構えた。東日本大震災津波後に現在地へ移転し、カーナビなど情報通信機器のプラスチック部品製造を主に手掛けている。
 震災後の人手不足が叫ばれる中、昨年3月には「ユースエール認定企業」の厚生労働大臣認定を受けるなど、若い世代が働きやすい環境を整えながら、計画的な採用を目指している。
 この中、急速な人口減少を受け、定年退職者の再雇用や外国人技能実習生受け入れなどのカバー策もとる。
 浅川部長は「少子化は特に大きな課題。今は人手不足感はないが、将来図としては危機感を持っている。生産性向上とともに従前からのワークライフバランス(仕事と生活の調和)の取り組みを展開し、安心して働ける職場であることを知ってもらいたい」と話していた。
 大船渡職安が担当する気仙地区では、景気低迷などを背景に震災前の高卒求人の動きは鈍かったが、震災以降は求人倍率(年度末時点)が1倍を超える高水準を保ち、30年度(31年3月卒業者)は4・46倍で、20年度以降の最高値を記録した。
 〝高騰〟の背景には、高卒者が10年前と比べて200人ほど減るなど少子化の影響が色濃く反映され、若い世代の確保は各企業それぞれの事業展開へのハードルともなっている。
 中村所長は「人手不足感は続くものとみられるが、求人数と求職者数の開きの幅は30年度より若干小さくなるのではないか。例年、求職者数はいまの時期から増えていく傾向にあり、今後の動向を注視したい」としている。
 地元志向は高まり、今年3月の高卒就職者125人中、気仙地区内への就職は76人。地元定着率は62・4%で過去最高となった。同職安の3日現在の把握によると、来年3月卒業予定者504人中、求職者は112人。4割程度が地区内での就職を希望しているという。
 求人公開は7月1日から、選考と採用内定は9月16日から。
 中村所長は「生徒たちの選択の幅を広げるためにも、6月中の求人提出を呼びかけていきたい」と話している。