避難確保計画の策定進む 気仙川沿いの福祉施設 住田

▲ 気仙川沿いに構えるすみた荘。避難確保計画では、約500㍍離れた社会体育館への誘導を盛り込んでいる

 近年、集中豪雨などに伴う甚大な洪水・土砂被害が全国的に頻発する中、気仙川沿いにある福祉施設では利用する高齢者らを対象とした避難確保計画を策定・活用する動きが進む。住田町世田米に特別養護老人ホーム・すみた荘を構える社会福祉法人・鳴瀬会(櫻井末男理事長)では今年1月、避難勧告時に約500㍍離れた社会体育館に利用者を避難させる計画をまとめ、今月23日(日)の町総合防災訓練で初めて避難行動を確認する。同施設や町は、訓練を通じて避難時の課題を洗い出しながら、有事への備えを充実させる。

 

洪水・土砂災害の備え充実へ

防災訓練に合わせ実践も

 

 県内での豪雨災害では、平成28年の台風10号襲来が記憶に新しい。特に岩泉町で被害が大きく、高齢者福祉施設に土石流が押し寄せるなどして24人が犠牲となった。気仙でも暴風域を伴って大船渡市付近に上陸し、各地で河川増水や道路の冠水が相次いだ。
 29年改正の水防法・土砂災害防止法では、洪水浸水想定区域や土砂災害警戒区域などにある福祉施設に対し、避難確保計画の作成や避難訓練の実施を義務づけた。対象に含まれる各施設では、行政機関の説明会に参加するなどして、計画策定事務を進めてきた。
 町によると、避難確保計画策定の報告を受けているのは、すみた荘に加え、町社会福祉協議会が運営する下有住のグループホーム・かっこう、デイサービス・とだての計3施設。すみた荘は洪水、かっこう、とだては土砂災害を想定した避難計画を組んだ。
 27年に現在地に新築したすみた荘は平屋建てで、利用者定員は70人。ショート利用やデイサービスで訪れる高齢者を含め、110人余りを受け入れる。町が28年に策定した防災マップでは、0・5㍍未満の洪水災害が想定される区域にある。
 今年1月にまとめた計画では、避難勧告発令時には利用者を速やかに施設外に避難させることにしており、第1避難所を約500㍍離れた社会体育館、第2避難場所を世田米中学校と定めた。
 現在、職員数は66人。利用者は足腰が不自由な高齢者が大半で、有事の際は施設が所有する車両でのピストン輸送を見据える。誘導に加え、避難所での対応など職員対応は多岐にわたることが予想され、今後は住民組織などによる協力体制充実も求められる。
 鈴木玲施設長は「安全を確保するため、地域の方々にも協力を求める部分が出てくると思う。訓練を重ねる中で、計画を骨太のものにしていきたい」と語る。
 2年ぶりとなる町主催の総合防災訓練は、23日午前7時30分から実施。福祉施設での避難計画策定を受け、今回初めて要援護者避難誘導を盛り込んだ。
 訓練では、気仙川の水位観測地点で避難判断水位を超過したことから、災害対策本部が要配慮者に避難を促すべく「避難準備・高齢者等避難開始」を発令。これを受け、すみた荘から施設避難入所者への協力要請が災害対策本部に寄せられた──との想定で実施する。避難誘導は地元の消防団員らが参加し、施設職員らとともに流れなどを確認する。
 町は近年、主に世田米に暮らす住民の避難は町役場で受け入れてきた。避難準備発令時からの行動などを想定すると、すみた荘入所者が社会体育館で長時間過ごすことも考えられ、町としては滞在に対応する物資の充実などが今後の課題となりそうだ。
 町総務課でも「必ずしもスマートな動きを求めるものではなく、何が必要か、どのような事態が想定されるかを確認できる機会になれば」ととらえる。訓練で浮き彫りになった課題を洗い出し、大雨が想定される時期の防災対策充実につなげることにしている。