大判の〝笑顔〟ずらり 気仙の住民ら被写体にした写真展 陸前高田市のアバッセで30日まで(別写真あり)

▲ オヤマさん(左から2人目)による笑顔の写真展がスタート

 一関市出身の写真家・オヤマカズヨシさん(61)=東京都=による巡回展覧会「東日本 笑顔の写真展2011~2019」は17日、陸前高田市高田町のアバッセたかたパブリックスペースで始まった。オヤマさんが東日本大震災の被災地で撮影したポートレートで、陸前高田会場では気仙地域の人々が写った作品を中心にピックアップ。福島県大熊町など、東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響が残る地に生きる人々の姿も取り上げ、大判の写真で克明に伝える。

 

 震災後、東北の被災3県の被災地をほとんどめぐり、住民の笑顔にこだわって写真を撮り続けてきたオヤマさんは、福島第一原発が立地する大熊町も平成25年から毎年訪問。今春、町内全域の避難指示が一部解除され、同町大川原地区に役場新庁舎が整備されたことを受け、同役場ホールを皮切りに岩手県内5カ所をめぐる写真展を始めた。
 2カ所目の開催地となる陸前高田では、震災直後から25年ごろまでに同市と大船渡市、住田町で撮影した写真を中心に60点以上を展示。掲示するパネルは大熊町が制作したものといい、17日に行われた搬入作業には同町の「じじい部隊」として知られる元役場OBら2人が駆け付けた。
 「じじい部隊」は、帰還困難区域となった同町において「若者にリスクを負わせたくない」と立ち上がり、町内の巡回や困りごとの解決を担ってきた平均年齢65歳以上の住民有志。避難指示の一部解除に合わせ、今年4月に解散した。
 この日は元隊員の鈴木久友さん(67)と岡田範常さん(66)が2㍍40㌢×3㍍15㌢のパネル8枚を同町から運び、仮設住宅で暮らしていたころにオヤマさんと知り合った陸前高田市米崎町の金野廣悦さん(70)らがともに設営にあたった。
 写真は1枚あたりの横幅が1㍍50㌢近い大判サイズで、被写体の笑顔だけでなく、撮影時の現場の雰囲気までくっきり。設営中も、大きな写真を見つけて足を止めた人たちが口々に「あれは○○さんだ」「みんなの表情がよくわかる」と言い合い、「また見にくるね」とオヤマさんに声をかけた。
 岡田さんは作品の魅力について「ほかのカメラマンは被災地のひどい場所を撮っていくことが多いけれど、オヤマさんはみんなの自然な笑顔を引き出してくれる」といい、鈴木さんも「彼は大熊で〝本当の写真〟を撮ってくれた」と語る。「じじい部隊」としてもそんなオヤマさんだからこそ協力してきたのだといい、パネルは「これからも写真展で使って」とする。
 気仙地域でも撮影してきたオヤマさんは25年、一関市大東町で作品展を開いたが、「ずっと海側のほうでやりたいという気持ちはあった」といい、金野さんを通じようやく沿岸部で展覧会が実現したことを喜ぶ。
 気仙では数年前に撮影した作品が多いことから、オヤマさんは「みんながその後どうなったか知りたい。見にきてくれたらうれしい」と話し、「ほかでも展覧会を開けるところがあれば紹介してほしい」と呼びかける。
 同展は30日(日)までで、期間中はほかの催事との兼ね合いから展示場所が移動になることもある。問い合わせはオヤマさん(℡090・3087・7739)まで。