ホテル誘致 最終調整段階に 陸前高田市議会一般質問で当局答弁 市街地に建設の見込み

▲ 一般質問初日は5議員が登壇

 陸前高田市議会6月定例会は18日、一般質問が始まった。初日は鵜浦昌也(創生会)、菅野定(新風)、及川修一(同)、菅原悟(新志会)、藤倉泰治(日本共産党)の5議員が登壇。かねて市が交渉を進めてきた高田地区の中心市街地へのホテル誘致について、当局は事業者と最終的な調整段階に入っていることを明らかにした。

 

 交流人口拡大策としての宿泊施設の充実にかかり、ホテル誘致の進ちょく状況について尋ねたのは及川議員。戸羽太市長は「誘致へ向けて事業者と話を進めており、前向きに検討していただいているところ」と答弁した。
 これに関し同議員が「宿泊者に中心市街地の飲食店を利用してもらうなど、ホテル誘致の果たす役割についてどう考えるか」と再質問したのに対し、岡本雅之副市長が「宿泊価格帯のほか、地元の飲食店の活性化につながるよう、ホテル内でどこまで飲食物を提供するのかといった内容も、事業者側の上層部が詰めている段階」と説明した。
 同議員と菅原議員は、高齢者による痛ましい交通事故が後を絶たない中、運転免許の自主返納や、返納後の移動手段の確保対策などを質問。
 齋藤晴美福祉部長は免許返納後の取り組みについて、「返納者に対しては、本人に許可を取ったうえで大船渡警察署から情報提供をいただき、市のデマンド交通やふるさとタクシー助成事業などに関するリーフレットを送付し、市内公共交通網についてお知らせしている」と述べた。
 このほか、急発進防止装置や自動ブレーキの機能を有した自動車の購入に対する助成についての考えを問われた佐藤由也市民協働部長は、「国の動向や他の自治体の導入状況なども注視しながら検討したい」と答弁した。
 菅原議員は車道幅員5・5㍍未満の道路で死亡事故の発生割合が高いとされることから、市道の現状と改良整備の見通しについても確認。
 岡本副市長は、市が管理する道路の総延長584㌔㍍のうち、約9割が車道幅員5・5㍍未満であるとしたうえで、「平成30年度における改良率47%を、令和5年度までに53・5%まで伸ばしたい。幅員4㍍以上を確保するといった車道幅員の拡幅、歩道の設置などを含め、延長約40㌔㍍の改良整備を目標に進めていく」とした。
 同議員は震災遺構の保存・活用にかかり、「奇跡の一本松」の経済効果についても質問。戸羽市長は「一本松茶屋と周辺の店舗を合わせ、ここ数年、年間1億円近い売り上げがあると推計しており、大きな経済効果が生まれている。東京五輪の聖火ランナーのコースに選定されたこともあって今後ますます来訪者が増えると見込まれ、より一層の経済効果が期待される」とした。
 トップ登壇の鵜浦議員は第1次産業従事者の減少と今後の対応について取り上げ、「復興事業が収束していくのに伴い、仕事が減少する。数年後を見据え、建設従事者に第1次産業で活躍してもらうため、行政が仕組みづくりをする考えはないか」と尋ねた。
 これに対して戸羽市長は「建設業者の方が通常の漁業を新規で始めるのはハードルが高いかもしれないが、本市で取り組みが始まっている陸上養殖などであれば、今まで漁業をやったことがない方でも抵抗なく入ってこられるのではないか」とし、「補助制度などについても年齢の上限を緩和するなど、何歳であっても頑張ろうという人を応援できる仕組みをつくっていきたい」と述べた。
 同議員はまた、市が苗木の供給地化などを目指し実証実験を行うとするピーカンナッツ事業について、「苗木を受け入れ、栽培してくれそうなところはあるのか」と質問。
 市長は「ほかの地域からもやらせてほしいという声があると聞いている。今後、全国的にもゴルフ場などが空いてくるといわれているが、そうした広大な土地の有効活用にも役立てられるので、引き合いはあると思う」と述べた。
 菅野議員は農業振興策の一環として、市総合営農指導センターにおける営農相談窓口の実績について確認。阿部勝地域振興部長は「市とJAおおふなと、県大船渡農業改良普及センターの三者協働で行っているもので、昨年度は20件の相談があった。年々、少しずつではあるが新規就農者は増えており、窓口が一定の役割を果たしていると認識している」と答弁した。
 同議員は、風疹の感染拡大防止策についても質問。千葉恭一福祉部次長は、これまで予防接種機会がなかった昭和37年4月2日から昭和54年4月1日生まれの男性が、ほかの世代と比べて風疹の抗体保有率が低いことから、「今期定例会に補正予算を計上し、本年度から3カ年かけ、対象となる世代の男性約2100人に対して、風疹抗体検査と予防接種のためのクーポン券発送を実施する」と説明した。
 藤倉議員は、追悼祈念施設や津波伝承館、道の駅の地域振興施設が整備される高田松原地区と、中心市街地の連携が欠かせないと指摘。
 阿部地域振興部長は「道の駅に足を運んでもらった人たちの市街地への迎え方については、商業者たちとも検討している。道の駅内にも観光案内所ができ、市街地にも市観光物産協会による案内所ができるので、双方で連携していく」と述べた。
 同議員は公共交通網のうち、デマンド交通の運行エリア拡大や増便の考えはないか当局の対応をただした。佐藤市民協働部長は「タクシー事業者が常時雇用している人数と車の台数の関係から、現状で限界」と理解を求める一方、バス停から住家まで坂道が多いエリアについては「ベンチャー企業などとも連携した新たな交通施策も含めて考えたい」とした。