被災地に癒やしの音色 愛知の「おとつむぎネット」が陸前高田でコンサート

▲ コンサート終了後には鶴亀鮨「名物」の紙テープ投げがあり、笑顔を見せる観客や出演者

 東日本大震災を機に、愛知県名古屋市を中心に東海地方の有志で結成した「おとつむぎネット」(石田音人(ねひと)団長)は、現在も被災地でのコンサートを続けている。訪問のたびに出会いの輪が広がる東北は、メンバーの「第2の古里」といい、今年も今月中旬に陸前高田市を含む被災3県をまわった。同市の高田松原の被災マツで製作した楽器演奏など心温まるステージを通じ、現地に元気を届けた。

 

胡弓などの演奏で聴衆を魅了したコンサート

陸前高田も訪問

 

 今回はメンバー15人が車でおよそ12時間かけて東北入り。14〜16日の3日間、岩手、宮城、福島の3県を巡り、本県では陸前高田市高田町の商業施設「アバッセたかた」と、同町の障害者支援施設「ひかみの園」を訪ねた。
 このうち、アバッセでは「初夏の歌・詩花祭りコンサート」と題した演奏と朗読会を開催。会場のパブリックスペースには市民ら約40人が集まった。
 楽器製作家で、胡弓奏者の石田団長(61)らが、津波で甚大な被害を受けた高田松原のマツで作った三味線や胡弓の演奏を披露。楽器は陸前高田市矢作町の村上製材所協力のもと5年ほど前に作られたもので、〝古里〟に優しい音色を響かせた。
 朗読指導の第一人者で、俳優のいのこ福代さんといのこさん率いる「朗読いのっこ」による朗読会も。観客は多彩なステージを心ゆくまで楽しんだ。
 おとつむぎネットは震災直後に結成。当初は福島、宮城の両県を訪れていたが、岐阜県可児市でサロン活動を手がけ、同団体とつながりのある國枝のり子さんと、陸前高田市高田町のすし店「鶴亀鮨」の阿部和明店主(65)が震災をきっかけに交流が生まれた縁から、同市も訪問先の一つに加わった。
 これまで20回以上東北を訪ね、その一方、東海地方でも活動資金や被災地への義援金に充てるためコンサートを開催。気仙をはじめ、交流が続く被災者には被災マツで作った楽器もプレゼントし、絆を形に残している。
 阿部店主は「震災ですべてを失ったが、おとつむぎネットさんをはじめ全国、世界とのつながりも生まれた。8年以上たっているのに被災地を忘れず、来てくれる方々とのご縁を大事にしなければならない」と感謝する。
 石田団長は「東海地方も過去に台風や豪雨被害があった時に全国から支援が寄せられた。そのご恩を今度は自分たちが返していかなければならない」と使命感をにじませ、「出向くたびに新たな人とつながり、東北は第2の古里のような感覚。名古屋では『東北はすでに復興した』と思っている人も多く、まだ道半ばという現状を伝えたい」と風化防止を誓う。