外国人の受け入れに課題 みちのく潮風トレイル ルートの維持・管理も 

▲ ルート上の看板には英語表記があるが、人対人のコミュニケーションが課題

 環境省がグリーン復興プロジェクトの一環としてルート設定を進めていた「みちのく潮風トレイル」が9日に全線開通を迎え、震災で被災した青森県八戸市から福島県相馬市までの4県28市町村を結ぶ全長1025㌔の長距離自然歩道がつながった。国内最長級のロングトレイルとして観光振興、震災伝承などさまざまな効果が期待されているが、一方で、開通間もないこともあって手探りな部分が多い。増加する外国人ハイカーの受け入れ体制や広範囲なルートの維持・管理など課題も多く、沿岸地域住民と関係者らが一体となった対応が必要だ。

 

9日に全線が開通 地域一丸での対応不可欠

 

 グリーン復興プロジェクトは、森・里・川・海のつながりによって育まれてきた東北の自然環境と地域の暮らしを後世に伝え、自然の恵みと脅威を学びつつそれらを活用しながら復興を後押ししようとするもの。環境省では、この取り組みの一つとして、歩くことで自然がつくり出した絶景や地域住民との交流などを楽しめる「みちのく潮風トレイル」の設定を進めてきた。
 気仙には大船渡市北中部ルート、同中南部ルート、陸前高田市ルートがあり、大船渡区間の延長は約76・6㌔、陸前高田区間は約39・6㌔となっている。
 自然の中を歩き、訪れた土地で住民と交流したり文化を楽しむトレイルは、近年では欧米を中心に人気を集めている。同トレイルは被災沿岸部を通り、ルート上には陸前高田市の奇跡の一本松などの震災遺構もあるため、震災について学びたいという外国人も訪れるなど、海外からのハイカーは年々増加傾向にある。 
 さらに、インターネットでは、訪日外国人向けに同トレイルの情報交換グループも立ち上がり、情報交換が活発に行われているなど注目度はますます高まる。
 同トレイルのホームページでは、英語版ルートマップを提供したり、ルート上の案内看板には英語などの表記も加えられているが、気仙のみならず全体的な課題となっているのは〝言葉の壁〟だ。外国人ハイカーが一日の疲れを癒やすために利用する民宿などで、互いの言葉が分からずコミュニケーションをとるのに苦労する場面もあるという。
 トレイルに限らず、インバウンド対策は国内において重要な課題に位置づけられており、今後、いかに外国人受け入れ体制を充実させていくかがトレイルの利用促進にも大きく影響しそうだ。
 環境省東北地方環境事務所大船渡自然保護官事務所自然保護官補佐の坂本麻由子さん(42)は「みちのく潮風トレイルは海外から来た人たちから好評だが、やはり言葉の壁はある。地域の方々にトレイルのことを周知して、協力をいただくことも大事」と話す。
 課題は言葉の壁だけではない。1000㌔余という長距離ルートの環境整備は、関係者だけでは手が回らない。
 トレイルルートのうち、大槌町から気仙沼市までの区間は、大船渡市観光物産協会が運営する末崎町の碁石海岸インフォメーションセンターが「サテライトセンター」として管轄するが、その担当区間は距離にしておよそ307㌔に及ぶ。
 今年は7、8月に計4回、釜石市や大船渡市三陸町吉浜、同町綾里、気仙沼市でボランティアによるルート整備を計画しており、各地域の住民に呼びかけて協力体制を構築していきたい考え。
 同センタースタッフの中野貴之さん(49)は「せっかくできた観光資源の一つなので、周知を進めて、地域振興につなげていければ」と話していた。