「命を守る」地域一丸で 大雨想定で総合防災訓練 住田町(別写真あり)

▲ 地元消防団員らが参加した要援護者避難誘導

 大雨被害を想定した住田町の総合防災訓練は23日、町内全域で行われた。早朝からの避難や救出訓練などが展開され、町民ら約2000人が参加。緊急時の避難場所や救助方法などを確認したほか、今回初めて福祉施設利用者をはじめとした要援護者の避難誘導も行い、関係機関や地域住民が一丸となって命を守る意識を高めた。

 

要援護者の搬送に重点

 

倒壊家屋を想定した負傷者救出も

 有事に迅速かつ円滑な応急対策対応ができるよう、関係機関の協力体制を確立し、地域住民の防災意識高揚を図ろうと隔年で開催。各世帯に配布されている町防災マップを使用した。
 気仙川の水位観測地点で避難判断水位を超過したことから、災害対策本部が要配慮者に避難を促すべく「避難準備・高齢者等避難開始」を発令。これを受け、川沿いに構える特別養護老人ホームすみた荘から施設避難入所者への協力要請が災害対策本部に寄せられた──との想定で実施。町内福祉施設での避難計画策定を受け、今回初めて要援護者避難誘導を盛り込んだ。
 第1次訓練では、すみた荘付近での災害時要援護者の誘導を想定した避難を実施。避難に時間を要する住民らに指定避難所への移動を促す呼びかけが防災無線で響き渡ると、駆けつけた地元消防団員らが車いすに乗った高齢者役の施設関係者を介助しながら専用車両に乗せ、避難施設に搬送するまでの流れを確認した。
 避難所では長時間にわたる滞在が予想されるため、職員は必要な物資を背負いながら、消防団員らに協力を求めた。搬送車両は何度も往復しなければならず、施設付近の町道には警察官が立ち、スムーズな通行を支えた。
 訓練ではこのほか、世田米地区で発生した大規模な土砂災害に伴い、多くの負傷者が出たとの想定も。歩けない状態の負傷者は消防団員が数人がかりで運んだほか、役場前駐車場では負傷者に対して効率的に医療行為を行うために重症度などを判別する「トリアージ」が行われた。
 さらに、大船渡消防署住田分署の駐車場では、倒壊家屋からの救出訓練を実施。消防隊や自衛隊員らが支障物を取り除くなどしながら、内部の負傷者を捜し出した。
 第2次訓練は、世田米小学校グラウンドで実施。自衛隊や自主防災組織関係者による応急搬送訓練では、竹材と毛布で応急担架をつくるなど限られた物資で災害対応にあたる意識を高めた。婦人消防協力隊による初期消火訓練ではバケツリレーなどが行われ、力を合わせて被害を最小限にとどめる動きを確認した。
 また、消防団員らの車両救出訓練も。陸上自衛隊による応急炊き出し訓練もあり、有事さながらの緊張感に包まれた。
 消防隊の総指揮を務めた佐藤清司消防団長は「福祉施設からの要援護者搬送訓練は、一度はしなければいけないと思っていた。常に70人以上が利用し、自宅にいる職員が施設に向かうことができない事態も想定される。今回出てきた成果や反省点をふまえて、今後の防災充実につなげたい」と話していた。