栗木鉄山の活用考えよう 遺構見学後に意見交換 初の「未来構想ワークショップ」 住田(別写真あり)

▲ 緑にあふれる栗木鉄山跡を見学する参加者

 住田町教育委員会による初の「栗木鉄山の未来構想ワークショップ」は27日、世田米の栗木鉄山跡などで行われた。町教委は、明治から大正にかけての製鉄遺跡として平成11年に県指定史跡となった栗木鉄山跡のさらなる価値の明確化を図ろうと、来年度中の国指定文化財申請を目指している。この日は遺構の見学や意見交換を行い、自然景観も生かした登録後の活用などに思いを膨らませた。

 

 栗木鉄山跡は主に世田米の国道397号栗木トンネルの種山側に位置し、付近には大股川が流れる。明治から大正にかけての製鉄所で、一時は国内4位(民間3位)の銑鉄生産量を誇った。石垣や水路、高炉の位置などを示す遺跡が見られるほか、工員住宅や購買など「鉄の村」として従事者の生活基盤もあったとされる。
 来年度中の国指定文化財申請に向け、平成29年度には第一高炉や本社事務所跡、30年度には鋳物工場跡で発掘調査が行われた。本年度は出土遺物実測図(土製品、鉄製品、陶磁器類)の作成や鉄製品成分分析、報告書作成を計画している。
 文化財分野の動きとは別に、本年度は栗木鉄山跡の活用可能性について、住民と行政が協働し、景観デザインの専門家を交えながら考えていこうと新たなプロジェクトが発足。町内で仮設住宅団地などの支援活動を展開する一般社団法人・邑サポートがコーディネーターを務める。
 ワークショップには、地域住民や町教委職員ら10人余りが参加。現地での遺構見学では、町教委の松高宏輔主事が説明役を務めた。第一高炉跡や本社事務所跡に加え、今も残る水路の石垣などを巡り、製鉄が営まれていた歴史にふれた。
 見学後は遊林ランド種山に移動し、地図を広げて今後の活用を見据えながら意見交換を行った。山あいの地形を利用し、高炉までスムーズに鉄鉱石を投入するために設けられた鉄索(空中ケーブル)の復元など、柔軟な発想から生まれたアイデアが続々と寄せられた。
 これまで、栗木鉄山跡全体の概要を示す資料は主に「記憶図」が用いられてきた。今後は発掘調査などで明らかになった構造などを地図に落とし込み、新たな看板や紹介資料などの製作にもつなげることにしている。ワークショップは8月以降に再び開き、幅広い観点から活用アイデアを探ることにしている。
 町内の各種景観事業にかかわり、今回のワークショップにも専門家の立場として参加した福岡大学工学部の柴田久教授は「歴史的な価値はもちろんだが、緑のすがすがしさにあふれる中に、遺構が残っている。自然とのバランスに配慮して復元・活用するデザインとなれば、かけがえのない魅力になると思う。今も残る遺構を分かりやすく伝えていくことも必要では」と話していた。