にぎわいの〝本丸〟に まちづくり会社が発足 陸前高田

▲ (左から)菅野さん、磐井さん、種坂さん、菅原さんの4人がまちづくり会社「陸前高田ほんまる㈱」のメンバーとして市街地の活性化に取り組む

 陸前高田市に、まちづくり会社として「陸前高田ほんまる㈱」(磐井正篤社長)が誕生した。被災市街地復興土地区画整理事業で整備されたかさ上げ地における空き地の利活用が課題となっている同市において、高田地区のかさ上げ部である中心市街地へ人を呼び、経済を循環させていく仕組みを構築するなど、まちなかを総合的にプロデュースし、にぎわいが生まれる〝本丸(中心)〟として各種事業を展開していく。

 

中心市街地の活性化目指し
空き地利活用も図る

 

 同市のまちづくり会社は、まちなかの魅力創出とその発信を通じ、周辺宅地の利活用を促すことなどを目的に設立。市と陸前高田商工会(伊東孝会長)などが共同出資し、資本金400万円でスタートした。
 発足にあたっては、市街地で営業する酒と和雑貨の店「いわ井」代表の磐井さん(62)が社長に就任。同市へのI・Uターン者である菅野英俊さん(29)、種坂奈保子さん(32)、菅原優さん(32)の3人が社員として、市街地におけるイベント開催や事業所のPR、「ほんまるの家」やチャレンジショップといった公共施設の指定管理を担い、まちなかのにぎわいづくりに寄与する。
 また、市が今年1月に立ち上げた「土地利活用促進バンク制度」の運用支援も実施。同制度では、かさ上げ部などの未利用地について「貸したい」「売りたい」といった地権者の意向別に宅地を色分けしたマップを市ホームページで公開し、土地利用希望者とのマッチングを図っているが、この地図にはどこの土地がどのように使われているかや、今後できる周辺施設等の情報については盛り込まれていない。
 このため、同社が付加情報を整理し、市と協議しながら今後のまちの予想図を〝グランドプラン〟として年度内に作成。まちなかにおいて事業を検討する人や、住宅を建てたいという人に、出店・居住後のイメージが想起しやすい具体的な情報を提供することで、同バンク利用者らにとっての〝潤滑油〟になることを目指す。
 同社は現在、中心市街地の事業者らで構成される「高田まちなか会」のホームページを制作中。震災前、陸前高田仮設店舗時代、現在の情報まで網羅した詳しい店舗情報を掲載するため、丁寧に取材にあたる。また7月の配布を見込み、新しい「まちなかマップ」の作成も手がけている。
 まちなか会の代表でもある磐井さんは同社について、「地元に根差していながら、〝外部の視点〟も地域の事業者らにもたらしてくれる」といい、商工業者に対し、ほかの商店街の取り組みや事業発展に役立つ情報提供なども図っていきたい考えだ。
 また、7月以降、毎月第4週の土・日曜日のいずれかには、まちなかで「ほんまるまるしぇ」を開催。市日のように、さまざまな個人事業者らが定期的に出店できる場としての確立を見込む。種坂さんは「まちなかにまだない業種や、手芸品などを作っている方にも〝おためし〟で店を出してもらい、手ごたえも探ってもらえれば」と語り、〝ミニチャレンジショップ〟のような役割も果たせたらと構想する。
 9月には新・道の駅高田松原の開業が見込まれる中、高田松原津波復興祈念公園エリアや、気仙町今泉地区との連携のあり方も模索。磐井さんは「『被災地だから』と来てくれている人は復興とともに減少していく。そうした中で交流人口を増やす鍵は〝人の魅力〟しかないと思う。みんなで頑張っている仲がいいまち、感じがいいまちだなという姿を見せられたら」と話す。
 社名の「ほんまる」には、中心市街地の「本丸公園」が市民にとってなじみ深い場所であることや、城における中心・主要な場所を意味する言葉であることから、「〝核〟となってここからにぎわいを生んでいこう」という決意を込めた。
 菅野さんは「一本松を見た人が、大船渡や気仙沼へ流れてしまうという現状もある中、陸前高田のまちなかを目指してもらえるようにしなければ」といい、「『まちへの貢献』が最大の目的。人を呼んで終わりではなく、きちんと店にお金が落ちる仕組みをつくっていく」と意気込んでいる。