被災者に寄り添い続け 瀧上弁護士8月に退任 そらうみ法律事務所に勤務 陸前高田
令和元年6月30日付 7面
陸前高田市高田町のそらうみ法律事務所陸前高田事務所(所長・三森祐二郎弁護士)で、開設時の平成28年10月から勤務している弁護士・瀧上明さん(47)が8月末で退任する。住まいの再建をはじめ、東日本大震災からの時間の経過とともに変わる被災者の悩み事に寄り添い続けてきた。9月からは、本県沿岸南部で唯一弁護士がいない大槌町に個人事務所を開き、法律家として同町の復興を後押しする。
大槌町に個人事務所開設へ
「前身事務所時代から代々使っているビブスです」。
中心市街地の商業施設「アバッセたかた」内の陸前高田事務所。震災後同市で続けてきた被災者向けの出張相談の時に身につけるビブスや住宅再建の公的支援制度などをまとめた紙芝居をテーブルに広げ、「この事業はこれからも続けないと」と瀧上さんが語る。
兵庫県尼崎市出身。京都大農学部を卒業したあと、大阪大法学部に学士編入し、平成15年に司法試験に合格。司法修習を経て17年に弁護士となった。
岩手との出合いは翌18年。釜石市の公設事務所に初代所長として赴任した。朝から晩まで仕事に追われた一方、「自分がやらなければ誰もやらない」という弁護士過疎地域での業務にやりがいを感じた。
東京都内の事務所入所が決まり、23年2月に釜石を離れた。三陸沿岸を未曾有の津波が襲ったのはその約20日後。5年間勤めた事務所をはじめ愛着のあるまちが津波で流される光景をテレビで目にし、現実に起きたことと受け止めることができなかった。
「岩手は法律家の力が必要になる」。被災地に足しげく通い、震災から4カ月後の7月11日、釜石市内に「震災復興をめざす岩手はまゆり法律事務所」を自力で開設。法的ニーズを把握するため、市内外の仮設住宅約4000戸にアンケート調査し、各仮設団地を訪ねて相談に対応するなど支援に当たった。
その後、同じく弁護士過疎地域で汗をかいた弁護士らとともに弁護士法人「空と海」を設立。瀧上さんは、陸前高田市に開設された公設事務所の〝後進〟としてオープンした、そらうみ法律事務所陸前高田事務所の初代所長に就任した。
震災から8年余り。瀧上さんは「被災者間でさまざまな『格差』が開いている」と指摘する。
県によると、市内の仮設住宅やみなし仮設入居者数は、5月末時点で県内最多の408人。高台などに自宅を再建しようと考えている仮設入居者は年齢を重ね、住宅ローン問題などが重くのしかかる。災害公営住宅でも高齢化が深刻さを増し、独居者も多い。
瀧上さんは「車がない人は生活も大変。経済面や近くに家族がいる人とそうでない人など、さまざまなことが絡み、格差ができている」と話す。
「課題は尽きない。もっと岩手の力になりたい」との使命感を胸に、大槌町で独立を目指す。同町は釜石で働いていたときに仕事でまわっていたなじみの地。月命日の9月11日の開設を見据える。
「陸前高田で働き、改めて現場に弁護士がいることの重要性を感じた。大槌は人口流出も深刻。どれほど役に立てるか分からないが、法律家として何ができるか現場で考えていきたい」と決意を語る。






