利益の一部を地元還元 地域電力会社を設立 公共施設の経費削減へ  陸前高田

▲ 陸前高田市とワタミ・ファーム&エナジー、長谷川建設が記者会見し、「陸前高田しみんエネルギー」の設立を報告

 地域電力会社「陸前高田しみんエネルギー㈱」の設立総会は28日夕、高田町の市コミュニティホールで開かれた。市内の公共施設などで使われる電力の供給元を同社に切り替えることで、電気料金を削減し、一般財源の負担を減らす効果を見込むほか、同市の復興と発展に思いを寄せる「思民(しみん)」へも小売りし、その利益の一部を地域づくりのために還元するとしている。

 

民間と市が共同出資

「思民」らに電力供給も

 

 同社は、外食産業大手・ワタミの子会社で、全国各地で地域電力会社の設立と支援を行っているワタミ・ファーム&エナジー㈱(東京都、小出浩平社長)、同市で再生可能エネルギーの研究・活用に取り組む㈱長谷川建設(長谷川順一社長)、市が共同で設立。資本金は1000万円で、ワタミ・F&Eが600万円、長谷川建設が300万円、市が100万円を出資した。
 設立総会は非公開で開催。終了後、小出社長がしみんエネルギーの社長を兼務し、長谷川社長と戸羽太市長が設立時取締役に就いたとして、3人が記者会見した。
 同社は、電気卸売り市場から電力を買い取り、公共施設や地域事業者、市民、思民らに安価で供給。営業利益のうちおおむね2割を、障害者支援や文化・スポーツ振興、農林水産物ブランド化支援といった地域づくりに還元するとしている。社名の「しみん」は、陸前高田「市民」と、同市の発展を願う「思民」の双方にかけた。
 本年度は、市内公共施設で高圧契約を結んでいる施設から順次、同社への切り替えを進め、令和2年度以降は低圧契約を結ぶ施設、民間事業者や一般家庭での切り替えを推進。公共施設では、平成30年6月~令和元年5月の実績で1億1939万円の電気料金がかかっているが、これを約3%(370万円程度)削減できる試算だという。
 また、同市出身者や東日本大震災の復興支援を通じて関係が構築された個人・団体・企業などの思民に対し、同社の取り組みをPR。「ふるさと納税」の電力版として「ふるさと納電」の仕組みを構築する。
 ふるさと納電推進のため、市は本年度の一般会計補正予算に「思民推進事業費」として474万円を計上。同市が総務省による「関係人口創出・拡大事業」のモデル地域として採択を受けてのもので、国からの補助率は10分の10。
 市はこれを活用し、在京・在道陸前高田人会、ふるさと納税寄付者、復興支援者らにアンケートを行い、どのような形であればしみんエネルギーの電力へ切り替えてもらえるかといったニーズを探りながら「ふるさと納電」の制度設計にあたるほか、周知啓発活動を行っていくとしている。
 小出社長は今後、市内でも木質バイオマスや太陽光、メタンガスによる再生可能エネルギーといった小規模プラントの設立も構想。「いずれ100%自給自足できるようになれば。小さく始めて大きく広げていく。数年後には地元雇用も生み出したい」と意気込んだ。
 戸羽市長は「地元に会社ができ、そこから電力を買うことで、利益を地域に還元できる仕組み。震災の風化もさけばれる中、『ふるさと納電』を通じ、思民の皆さまに改めて陸前高田とのつながりを意識してもらえる」と期待を寄せた。