「耕畜連携」充実へ新機軸  トウモロコシの栽培実証 住田町(別写真あり)

▲ 上有住新田の旧牧草地で始まったトウモロコシ栽培

 住田町は本年度、町内の遊休農地を活用して飼料作物となるトウモロコシの栽培実証を進めている。町内農業生産額のほとんどを占める畜産分野のさらなる振興と、農地の有効利用を図る「耕畜連携」の一環。地元の畜産施設から出る堆肥を利用しながらトウモロコシを育て、子実を町内の養豚農場に飼料として供給して〝地産地消〟の体制をつくるもので、今後の取り組みが注目される。

 

遊休農地を生かし 養豚飼料に子実活用

 

 町内の農業産出額は約50億円で、このうち畜産が90%超を占める。豚や鶏に与える濃厚飼料の多くは輸入に依存し、国際情勢の影響を受けやすいとされる。
 近年、栄養価の高い子実だけを収穫するトウモロコシの国内栽培が徐々に拡大。連作障害を防ぐといった利点もあり、農地保持の面からも注目を集めている。
 一般的にトウモロコシの子実は、飼料米よりも1㌶あたりの収量が多く見込める。さらに、生産者の作業時間も水稲や大豆、小麦に比べても大幅に少なく、効率的な農地利用が期待できるという。
 町は畜産施設から出る堆肥を生産に利用でき、年々拡大している遊休農地の活用が見込めるほか、地元の養豚・養鶏にも〝顔の見える〟飼料を提供できることから、実証試験に着手。県内では花巻市などで実績があるが、気仙では例がないという。
 本年度は、これまで水田として利用された上有住両向の民有地約0・8㌶と、牧草地だった上有住新田の町有地約3㌶で実証栽培に着手。いずれの農地も、新田に本社農場を構える㈲ありす畜産に生産を委託している。
 水田での実証は、担い手の高齢化などにより稲作をあきらめる生産者が増えている中、遊休農地拡大を防ぐ観点で実施。旧牧草地は広いため、効率的な生産を見据えて実証場所に加えた。
 今年4月の土壌分析などを経て、6月に両向では約5万6000粒、新田では約21万粒の種をまいた。現在は高さ10㌢前後にまで成長し、農地には緑の直線の列が描かれている。
 生産にあたり、課題の一つは町内農業全体の悩みの種にもなっている鳥獣被害の対策。2日に新田の農地で町職員が確認を行った際も、動物の足跡が散見された。今後は農地を囲むように電気柵を設置し、侵入を防ぐ方針。現段階の実証面積は小規模といえる中、中長期的な視点では大型機械の確保といった調整課題もある。
 乾燥させた状態での収穫は10月中旬を見込み、子実はありす畜産で育てている豚の飼料として活用される。生産成果によっては、町内で盛んな鶏や牛での利用も見据える。
 町農政課では「水田を利用でき、稲作よりも少ない人手で生産が見込める。地元で飼料をつくれば、国際的な価格動向に左右されにくいといった面もある。飼料の〝地産地消〟を進め、安全・安心の農業につなげたい」としている。