2019参院選 岩手選挙区/17日間の舌戦火ぶた 予想の3氏が立候補

 令和初の国政選挙となる第25回参議院議員通常選挙(改選定数124)は4日、公示された。岩手選挙区(改選1)には、届け出順に、立憲民主、国民民主、共産、社民の各党が推薦する無所属の新人・横澤高徳氏(47)=矢巾町、自民党公認で公明党推薦の現職・平野達男氏(65)=北上市・3期、政治団体「NHKから国民を守る党」(N国党)の新人・梶谷秀一氏(53)=東京都新宿区=の3氏が立候補。各候補は県都で第一声を上げるなどし、17日間にわたる選挙戦の開幕を告げた。投票は21日(日)に行われ、即日開票される。

 

 立候補届け出は盛岡市の県庁で午前8時30分から行われ、午後5時に締め切られた。立候補が予想された3氏以外に届け出はなく、改選議席1を3人で争う少数激戦突入が確定した。
 横澤、平野両氏は同市の選挙事務所前や商業施設前で、雨の降る中でそれぞれ第一声を上げた。集まった支持者たちを前に、国政とのパイプ役としての決意や主要政策などを力強く訴えたあと、気勢を上げて選車に乗り込んで各地での遊説に出発していった。
 梶谷氏は街頭に立たずインターネット上で訴えを広げたいとしており、この日、街頭に立つ姿は見られなかった。
 今回の選挙は、今月28日の任期満了に伴うもの。現政権の政権運営、憲法改正のあり方、10月に予定される消費税率引き上げ、公的年金制度などへの評価が問われる。
 与党の自民は勝敗ラインとして、連立を組む公明と合わせ非改選を含めた総定数の過半数に至る53議席、または今回の改選過半数となる63議席を掲げる。
 一方の野党は、選挙区で改選数1の「1人区」で統一候補を擁立するなどして対決姿勢を鮮明にしている。
 1人区の一つである岩手選挙区は、現新3氏が激突。選挙戦は与野党対決が基軸で、実質的に平野氏と横澤氏の一騎打ちの構図で展開されるものとみられる。
 自民としては第16回選挙(平成4年)以来27年ぶりとなる選挙区勝利、野党側は前回選挙(同28年)に続く統一候補の勝利を目指す。
 梶谷氏はNHK放送のスクランブル化といった訴えの浸透を図る。
 投票は、21日午前7時から各市町選挙管理委員会設置の投票所で行われる。
 期日前投票はきょうから20日までの午前8時30分~午後8時に受け付ける。会場は大船渡市が市役所本庁第1会議室のほか、16日からは三陸支所、綾里、吉浜両地域振興出張所(午後5時15分まで)でも実施。陸前高田市は市役所4号棟第4会議室、住田町は町役場交流プラザ。
 県選管によると、3日現在の選挙人名簿登録者数は、県全体で106万9973人(男51万690人、女55万9283人)。大船渡市は3万1654人(男1万5082人、女1万6572人)、陸前高田市は1万6820人(男8156人、女8664人)、住田町は4854人(男2364人、女2490人)となっている。
 平成28年6月21日の前回選登録日に比べ、県全体は2万4030人、大船渡市は1279人、陸前高田市は684人、住田町は309人減った。
 18、19歳は県全体で2万3026人(男1万1998人、女1万1028人)。大船渡市は635人(男354人、女281人)、陸前高田市は351人(男199人、女152人)、住田町は80人(男39人、女41人)。

 

横澤 高徳候補(無・新)

「低い目線」から政治を

 

 野党統一候補として無所属で臨む横澤候補は、午前9時すぎから盛岡市大通の事務所前で第一声を上げ、共闘による政治改革を訴えた。
 国民民主党政務調査会長の泉健太衆議院議員、日本共産党県委員会の菅原則勝委員長、社民党県連代表の小西和子県議、立憲民主党県連代表の高橋重幸盛岡市議と、推薦政党関係者がそれぞれ激励。連合岩手の八幡博文会長、選対最高顧問の小沢一郎衆議院議員、同本部長の木戸口英司参議院議員、同総括責任者の伊藤勢至氏が有権者に支持拡大の力添えを訴えた。
 このうち、泉氏は「野党各党で共通政策をしっかり持って戦いたい。消費税増税は絶対にありえず、年金問題もしっかり話し合っていかねばならない。横澤さんのもとに力を結集し、〝強さと優しさの政治〟を実現していこう」と述べた。
 小沢氏は「相手候補は知名度で勝り、この選挙戦は厳しい戦いになる。今回の選挙では政権交代はできないが、安倍政権を変えることはできる。野党共闘の原点の地である岩手から、なんとしても横澤候補を送り出せるよう、私も皆さんとともに努力したい」と結束を呼びかけた。
 最後にマイクを握った横澤候補は、「何よりも皆さまの声を国へ届けねばならない」と決意をみなぎらせ、25歳で車いす生活となったことを振り返りながら「車いすから見える視線がこの社会には大切。高いところからものを言うのではなく、低い目線からの政治をつくっていく」と述べた。
 また、10月からの消費増税への反対意思を明示し、「今この岩手は増税ができる状態にはない。皆さまの暮らしを温め、将来安心して暮らせる社会をつくらなければ。障害者としての視点と、健常者だったころの視点、双方の視点をもって、皆さまの声なき声にも耳を傾け、前へ前へと進んでいきたい。強くなければ生きていけないが、優しくなれば人は幸せにできない。強さと優しさのバランスが取れた日本をこの岩手からつくっていこう」と述べ、集まった支持者らとともに「勝つぞ」コールを三唱した。

 

平野 達男候補(自民・現③)

努力と工夫で岩手伸ばす

 

 自民党公認で4選を目指す平野候補は午前9時20分ごろ、盛岡市大通の商業施設・クロステラス盛岡前で第一声を上げた。
 選対総括責任者の大井誠治県漁連会長と、同本部長で自民県連会長の千葉伝県議が、候補の3期18年の実績を強調しながら政権安定の必要性を訴えた。
 議員団を代表した鈴木俊一東京オリンピック・パラリンピック担当大臣(衆議院岩手2区)は、「政治の安定を確固たるものにするのか、それとも不安定になって決められない政治になってしまうのか、重要な選挙だ」と口火を切った。
 争点となっている消費税増税については、「その安定・恒久財源をもとに、安心して暮らせる全世代型の社会保障制度を構築する」とし、幼児教育または保育費の無償化をはじめとする施策に触れ、「野党は消費税を上げずに耳ざわりのいい公約を示している」と指摘した。
 そのうえで、平野候補は発災直後から、時に大臣として被災地の復旧・復興に向き合い、農林水産業の成長産業化、中小・小規模事業者の応援に汗を流してきたとし、「岩手のためにもっとも力になれるのが平野候補。友党・公明党と車の両輪となって押し上げていきたい」と力を込めた。公明党県本部青年局長の小林正信市議も、げきを飛ばした。
 多くの拍手に迎えられてマイクを持った平野候補は、まず「努力と工夫次第で、岩手の農業、畜産業、林業、水産業はもっともっと伸びる。そのための工夫に、引き続き取り組ませていただきたい」と訴え、強い中小・小規模企業づくりにも意欲を示した。
 復興については「だいぶ進んだが、まだこれから。引き続き先頭に立たせてほしい」、ILC誘致には「この1年半で方向性が決まる。県の国会議員全員で手を組み臨む」と決意を示した。
 結びに「自公政権で引き続き安定した政治をとの意志を示していただきたい」と呼びかけ、支持者とともに「ガンバロー」の声を上げ、遊説に向かった。

 

 

期間中は遊説など行わず
梶谷氏

 

 政治団体「NHKから国民を守る党」の新人・梶谷秀一氏は同日、県庁で立候補届け出のみを行った。
 選挙期間中は遊説などを行わず、動画配信サイトで訴えを広めるとしている。選挙事務所も置かない方針。