〝まちの縁側〟で上棟式 隈研吾氏設計の複合施設 陸前高田(動画、別写真あり)

▲ 「まちの縁側」として期待される複合施設

 陸前高田市高田町の中心市街地で9日、観光や福祉・子育てにかかる複合型コミュニティー施設「陸前高田アムウェイハウス まちの縁側」の上棟式が行われた。設計を担当した世界的建築家・隈研吾氏らが出席し、気仙大工の伝統的な技が生きる〝骨格〟が組みあがったことを祝うとともに、完成後に広く利活用が図られるよう願いを込めた。建物の完成は12月予定で、年明けからの一斉供用開始が見込まれる。

 

12月完成目指す

 

建築家の隈氏(左から2人目)、デザイナーの皆川氏(右から4人目)らが上棟式に臨んだ

 同施設は、一般財団法人日本アムウェイ財団(東京都、佟嘉楓代表理事)が被災地コミュニティー再生支援として、総事業費3億8000万円をかけて整備。アバッセたかた南側に建設中で、観光案内センター、社会福祉相談センター、子育て支援広場、障害者就労支援カフェで構成される複合施設となる。
 設計は隈研吾建築都市設計事務所が担当。東京五輪のメーン会場・新国立競技場の整備事業も手がける隈氏は、学生時代から気仙の優れた職人集団「気仙大工」にあこがれを抱いていたといい、今回もその技術を取り入れるなど、地元の歴史・文化を感じられる設計デザインに仕上げた。
 さらに、インテリアには、国内外から高い評価を受けるテキスタイル(布地・織物)ブランド「ミナ・ペルホネン」のデザイナー・皆川明氏が携わることが決まった。
 この日は同財団と、隈、皆川両氏をはじめとし、同設計事務所、ミナ・ペルホネン関係者、施工を担当する㈱長谷川建設、市、テナント入居する同市観光物産協会、社会福祉協議会、あすなろホーム、NPO法人きらりんきっずの4事業所の職員らが出席。古式ゆかしい作法にのっとって上棟式に臨み、もちまきなどを行った。
 戸羽太市長は、日本を代表する才能と地域が誇る伝統技術との融合を実現させた関係者らに謝意を示すとともに、「気仙大工の技術を示せる施設が完成へ向かって走り出した。さまざまな世代、立場の人が集う場であり、陸前高田の理想を集約したものになるとワクワクしている」と期待を寄せ、佟代表は「『まちの縁側』の名のとおり、市民の方に楽しく使ってもらうことはもちろん、東北へ思いを寄せる方々にも来ていただきたい」と語った。
 建物は木造平屋建てで、延べ床面積は約500平方㍍。腕木を用いることで屋根が大きくせり出す形になる「せがい造り」により、ひさしが深い独特の縁側空間が生まれるといい、訪れる人の自然なコミュニケーションが図られることも期する。
 カーテンや照明のかさ、いすの座面といったファブリックには、ミナ・ペルホネンの布を使用。皆川氏は「陸前高田の自然や環境によく合う、やさしいものを選んでいるところ」とする。
 隈氏は「こんな立派な上棟式に参加したのは初めて。気仙大工の伝統の〝強さ〟を感じる」と感激をあらわにし、「気仙大工の技術は〝世界遺産〟。こうして一緒に仕事ができるとは思ってもみなかった。その建物に皆川さんの布が加わるということで、出来上がりが楽しみ」と話し、「みんなが集まる縁側ができることで、復興の勢いがさらに速くなれば」と願った。