越喜来の被災跡地 産業用地の整備完了 陸前高田の事業者が立地へ 大船渡

▲ イチゴ栽培施設の立地に向け、産業用地としての整備が完了した浦浜地区の被災跡地

 大船渡市は11日の定例記者会見で、三陸町越喜来字沢田地内(浦浜地区)で進めてきた被災跡地の産業用地整備が完了したと発表した。この用地は平成29年度、市が防災集団移転促進事業(防集)による移転元地(買取地)と、地権者の協力を得た周辺民有地を集約した「利活用候補地」として使用事業者を募っていた土地の一画で、イチゴの周年栽培を手がける陸前高田市の㈱リアスターファーム(太田祐樹代表取締役)が立地する。利活用候補地への立地は、今回が初のケースとなる。

 

㈱リアスターファーム 夏イチゴの産地化目指す

 

 市は、東日本大震災の津波で浸水し、防集で高台などに移転する被災者から買い上げた市有地について、希望者に貸し付けや売り払いを実施。一方で、農地や自力再建者が所有する被災跡地など買い上げができない民有地もあり、点在する市有地では利活用が難しいという課題があった。
 市はこの対策として、末崎町細浦地区、三陸町綾里地区、同越喜来地区(浦浜)において、市有地周辺に位置する民有地の地権者から協力を得た土地と市有地を集約。比較的広い面積を確保した土地を利活用候補地として情報を発信し、希望事業者に貸し出しや譲渡を行うこととした。
 越喜来地区は沖田地内の3区画(合計面積7・34㌶)を対象に、29年度から利用事業者を募集。このうち、旧越喜来小学校北側に位置する1区画について、イチゴ生産・担い手育成拠点施設としての立地相談があり、産業用地としての利用が決まった。
 産業用地の面積は約0・9㌶。測量設計は30年10〜12月、がれき撤去や敷きならしといった整備工事は今年2〜6月に行われた。市によると、整備工事は当初7月上旬までを予定していたが、作業がスムーズに進み、6月中旬で完了したという。
 事業費は約3000万円。用地整備には、復興交付金効果促進事業を活用した。
 この産業用地に立地するリアスターファームは、太田代表取締役が今年2月に設立。太田代表取締役は現在、陸前高田市米崎町で高度な技術を活用し、県内初となるイチゴの周年栽培に取り組んでいる。
 国と県からは地域経済牽引事業者の認定を受けており、今後は大船渡市とともに地域未来投資促進法に基づく地方創生推進交付金を活用した「夏イチゴ産地化プロジェクト」を進めていく。
 市から産業用地を借り受け、栽培棟などとして間伐材を用いた木骨ハウスによる施設を整備。夏涼しく冬暖かい三陸沿岸の気候を生かし、夏を中心としたイチゴ栽培のほか、担い手育成や生産技術の普及、夏イチゴのブランド化に向けた可能性調査、加工品等研究開発支援のソフト事業にも取り組むこととしている。
 市によると、今後は8月に同社と市との間で土地の賃貸借契約の取り交わしを予定。その後、同社が施設整備に着手する見通しという。
 戸田公明市長は「被災跡地の利活用に向けていろいろ知恵をしぼり、働きかけをしてきた中で、こうして産業用地として整備がなされたことは非常に感慨深い。今後はイチゴの栽培施設が整備されていくが、生産性の高い施設だと思う。地域の農業者らに、将来の農業のあり方などについての示唆を与える機会になるよう期待したい」と話している。