人材確保、どう図る 9月に企業見学会開催 名古屋市が陸前高田で

▲ 稲波さん㊨がコーディネーターを務め、陸前高田市内の事業所が企業訪問へ向け勉強会に参加

 東日本大震災後から陸前高田市を〝まるごと支援〟している愛知県名古屋市は本年度、陸前高田における新たな産業支援の取り組みを始めた。若者が市外に流出したまま戻ってこないという陸前高田の事業者らの悩みを受け、地域で働くことの魅力を伝えるための企業見学会を9月に開催するなどし、地元の高校生に働く現場からの生の声を伝えるとともに、地元就職への意識を高めてもらいたいとしている。


地元で働く魅力伝える

産業支援の一環

 

 名古屋市は平成23年5月、「陸前高田産業支援デスク」を設置。同市でのイベント出展支援や商談会開催などを通じ、陸前高田市産品の販路開拓を図るサポートを行ってきたほか、26〜30年度には公認会計士とデザイナーが同市を訪れ、商品開発や経営に対する助言などを行う専門家派遣事業を展開するなど、幅広く産業の復興を後押ししている。
 本年度は、地元事業者から「地域の若者が、大学などを出たあとそのまま市外に就職してしまう」「思うように若手の人材を雇用できない」という悩みを受け、人材確保支援事業を開始。まずは9月、高田高生を対象に「オープンファクトリー」と銘打った企業見学会を行うこととし、このほど参加事業者へのヒアリング、勉強会などを行った。
 今回は㈱八木澤商店、酔仙酒造㈱、キャピタルホテル1000㈱、㈱シェリール、㈱ボンマックスアパレル、きのこのSATO㈱、広田湾漁業協同組合の7事業所が対象。ヒアリングは、専門家派遣事業でも陸前高田の企業とかかわったデザイナーで、㈱RW(名古屋市)代表取締役の稲波伸行さんが担当した。
 高田町のほんまるの家では、各事業所の勉強会として稲波さんとともにワークショップを実施。訪れた高校生たちにただ見学させて終わりではなく、企業としての役割やビジョンを明確に伝えられるよう、経営者や従業員らが事業や地域で働く意義について深く掘り下げる機会とした。
 今後は、8月にもう一度勉強会を開催。いい人材が働く会社になるためにはどうすべきか、オープンファクトリーを通じて高校生に何を伝えたいかなどを考える。9月17日(火)には高田高校2年生(121人)が8グループに分かれ、1社1時間程度、4社ほどを見学。担当社員との対話の場も設け、高校生から率直な感想を聞き、職場にフィードバックする。
 陸前高田市役所で応援職員として働いたこともある名古屋市産業労働課産業企画係の山口俊主事は、「自社の魅力を見つめ直し、その価値に気づくことは今後の社員教育にも結び付き、企業側にとってもメリットがあると思う。まずは高校生に知ってもらうことが重要。すぐに就職に結びつかなくても、地元にこんな仕事があり、こんな魅力的な人たちが働いているということを伝え、職業観を醸成することで、生徒たちが陸前高田へ戻ってくるきっかけになれば」としている。