2019参院選/与野党競り合い最終盤へ 岩手選挙区気仙の情勢
令和元年7月19日付 1面
第25回参議院議員通常選挙は、21日(日)の投票まで残すところ3日となった。岩手選挙区(改選1)には届け出順に、立憲民主、国民民主、共産、社民の各党が推薦する無所属の新人・横澤高徳氏(47)、自民党公認で公明党推薦の現職・平野達男氏(65)=3期、政治団体・NHKから国民を守る党の新人・梶谷秀一氏(53)の3氏が立候補。気仙でも与野党対決の様相を呈しており、3期18年の実績と初代復興相としての知名度を持つ平野氏を、野党統一候補の横澤氏が追い上げる形で最終盤を迎えている。梶谷氏は独自の運動で訴えを広げる。
平野氏浸透、横澤氏追う 梶谷氏は厳しい戦いに
参議院の定数は昨年7月の公職選挙法改正により、選挙区が2人増の148人、比例区が4人増の100人となった。今月28日の任期満了に伴う今回の改選数は、選挙区が74、比例区が50となる。4日に公示され、選挙区で215人、比例代表で155人が立候補している。
現政権の政権運営、憲法改正のあり方、10月に予定される消費税率引き上げ、公的年金制度などへの評価が問われる。自民・公明の与党側は非改選議席を含む過半数を勝敗ラインとしており、野党側はこれを阻止すべく選挙区で全国で32ある改選数1の「1人区」で統一候補を立てるなどし、選挙戦が繰り広げられている。
1人区の一つとなっている岩手選挙区に立候補した3氏は、県内各地に選車を走らせたり、インターネットで訴えを発信するなどしながら、支持の広がりを目指している。梶谷氏は選挙区内に事務所を置かず、公示後の遊説などを行わず動画配信サイトで訴えており、実質的には横澤、平野両氏による一騎打ちの構図となっている。
横澤氏は4野党統一候補としての初挑戦で、知名度不足の課題に共闘の枠組みで対応する。各党から協力要請を受けた達増拓也知事が積極支援。気仙では国民民主県連副代表を務める田村誠県議(大船渡選挙区)をはじめ、推薦各党の支持層、〝小沢系〟の市町議が運動を支えている。
比例については各党ごとの対応をとっており、関係者は「比例はおのおのだが、選挙区では目標を一つにする強みがあり、共闘のつながりは固い。改革勢力の議席を守りたい」と語る。政権批判の受け皿としてのアピールも強めながら、最後の追い込みに入っている。
平成28年に自民へ入り、今回初めて公認として臨む平野氏。衆議院小選挙区の区割改定によって気仙地区も地盤となった鈴木俊一五輪担当大臣、佐々木茂光県議(陸前高田選挙区)、各市町支部、比例代表との連動を明確にする公明の支持層が運動の中核となり、支持拡大に努めている。
民主党政権時代に初代復興相を務めた経緯もあり、従前から自民支持に厚みがあった住田町をはじめ、大船渡、陸前高田両市でも浸透。過去に野党統一候補を推した層にも食い込む。陣営では「政治の安定と27年ぶりの選挙区勝利を目指す」と意気込みを見せる。
梶谷氏は、NHKのスクランブル放送化実現の訴えを強くする。ネット主体の運動となっており、気仙に足がかりはなく、支持に広がりを欠いている。
平成28年の前回選も岩手選挙区には3氏が立候補し、実質的な与野党対決の構図だった。この際は、野党統一候補の新人・木戸口英司氏が県内33市町村中、気仙2市1町を含めた16市町村でトップ得票となり、自民公認の新人に7万5788票差をつけて当選。気仙3市町計では、木戸口氏が自民新人を2552票上回った。
投票率は、全国と県全体は平成25年の第23回参院選を上回っていたが、大船渡市59・50%(第23回参院選比5・44ポイント減)、陸前高田市61・94%(同2・27ポイント減)、住田町63・31%(同2・93ポイント減)と、気仙2市1町すべてで下がった。
広大な全県が選挙区とあって公示後に横澤、平野両候補本人が気仙に入る回数は限られている。両陣営の運動に熱がこもる一方、特定の支持政党を持たない有権者からは「身近な選挙とは思えない」といった冷めた声も聞かれ、無党派層の動向や投票率の行方も注目されるところだ。