夏のにぎやかさ戻る 綾里で9年ぶり「海開き」 大船渡(別写真あり)

▲ 9年ぶりに海開きが行われ、波打ち際に歓声が広がった綾里海水浴場

 大船渡市三陸町の綾里、越喜来・浪板の2海水浴場で20日、「海開き」が行われた。このうち、綾里は東日本大震災後は初、9年ぶりに海水浴が可能となり、合同開設式などを実施。波打ち際では地域の子どもたちが歓声を上げ、ふるさとの海に夏のにぎやかさが戻った。一方、同町の吉浜は監視体制が整わないことから、この日の開設は見送りとし、整い次第遊泳可能とする見通し。海水浴場の開設は8月18日(日)までで、市や関係機関は多くの利用を呼びかけている。

 

越喜来・浪板も 三陸町の2海水浴場開設

 

 市が開設者となっている海水浴場は、三陸町の綾里、越喜来・浪板、吉浜の3カ所。いずれも震災の津波で甚大な被害を受けたことから、市は平成23年度以降は海水浴場の開設を見送り、関係機関と連携して防潮堤等の復旧・復興工事、海底がれきの撤去などの安全対策を進めてきた。
 29年度には、浪板が市内、気仙で震災後第1号として海開きを実施。30年度は吉浜でも海水浴が可能となり、同年度は両海水浴場に延べ約4000人が訪れた。
 綾里は、30年度末までに防潮堤整備などの復興関連工事が完了。海底のがれき調査では遊泳に問題がないと確認できたことから、9年ぶりに海開きを行うこととした。これに合わせ、隣接する漁港内には新たなシャワー室・トイレも整備された。
 綾里、浪板の合同による開設式は、海水浴場を管理する市観光物産協会(齊藤俊明会長)が主催。綾里海水浴場で行われ、同協会や市、地域の関係団体、一般利用者ら20人余りが参加した。
 神事では、参加者らが事故のない安全な海水浴ができるよう祈念。同協会の熊谷立志副会長は「開設期間中は事故防止などに努め、万全の管理体制で臨みたい。多くの方々が訪れ、安全で快適に利用されるよう願う」とあいさつを述べ、戸田公明市長が祝辞を贈った。
 式後は、子どもたちを対象にしたくじ引きゲームを実施。参加者にはくじ付きの菓子の詰め合わせがプレゼントされ、くじとおもちゃを交換した。
 この日、沿岸部は霧がかかる時間帯もあったが、綾里では開設式に合わせて次第に青空が広がった。盛岡地方気象台によると、大船渡の最高気温は23・8度(平年比1・5度低め)と7月上旬並み。水温は20度を下回る冷たさだったが、訪れた海水浴客らは波打ち際で歓声を上げながら水遊びや初泳ぎを楽しんだ。
 綾里中学校の森美莉愛さん(1年)は、「水がすごく冷たいけど、地域の海で泳げるのはうれしい」と笑顔。
 震災前にも綾里の海で遊んでいたという近藤羽那さん(2年)は、「震災でずっと泳げなかったが、こうして綾里でまた泳げるようになってうれしい。すごく楽しい」と話し、初泳ぎを満喫していた。
 綾里、浪板の両海水浴場の開設は8月18日までで、時間は午前10時~午後4時。悪天候、波が高い場合などは遊泳禁止とする。各海水浴場に設けたシャワー室は、開設時間内に限り有料で利用できる。
 市は当初、本年度は三陸町内の全海水浴場を開設する計画で準備を進めてきた。しかし、吉浜の監視体制が整わず、海開きに合わせた開設を見送った。開設期間内に監視体制が整った折には、遊泳可能にするとしている。