夏季の未利用資源を活用 「どんこ揚げ蒲鉾」商品化 北里大などが研究、開発
令和元年8月9日付 1面
東北の海で年間を通じてとれる魚でありながら、夏季にはほとんど需要がないドンコ(エゾイソアイナメ)を原材料にした「どんこ揚げ蒲鉾(かまぼこ)」が、北里大学海洋生命科学部などによって商品化され、11日(日)から大船渡市三陸町越喜来の道の駅さんりくで試験販売が行われる。同学部が市や県、漁業者らと連携して研究、開発した商品の製造は、同市猪川町の非営利型一般社団法人かたつむりが担う。今後は本格販売も視野に入れており、大船渡の未利用資源を有効活用した新名物の成長に期待がかかる。
11日から大船渡で試験販売へ
道の駅さんりくで限定50箱
ドンコは主に冬場、塩焼きや鍋料理の具材として気仙でも親しまれる魚。年間にわたってとれるものの、市価が高いのは冬場のみで、夏季はほとんど値が付かず、捨てられることもあるという。
こうした夏季のドンコに目を向けたのが、北里大海洋生命科学部海洋ゲノム科学研究室の渡部終五特任教授らの研究グループ。平成25年以降、県水産技術センターの支援も受けながら水産練り製品の原料として有効活用するための研究開発を行ってきた。
研究を通じ、ドンコを原料にした水産練り製品は、高級練り製品の原料魚とされるシログチを使用したものに匹敵する弾力があると判明。地元漁業者らの協力も受けながら試作と試食を重ねてきたほか、28年には三陸町越喜来の同大学海洋生命科学部付属三陸臨海教育研究センター内に水産食品加工室が開設され、製造環境も整った。
その後も、ドンコを用いた揚げ蒲鉾と蒸し蒲鉾を製造し、県や大船渡商工会議所が主催する商談会にも出展。昨年の市産業まつりでも試食会とアンケート調査を行うなど、商品化に向けた研究を進めた。課題だった製造先も昨年度、協力する市を通じてかたつむりに決まった。
現在は渡部特任教授らの監修を受け、かたつむりの利用者らが週に1回、水産食品加工室に通って揚げ蒲鉾を製造。商品のパッケージデザインもかたつむりが担当した。
原材料は、市内で水揚げされたドンコ。下処理などを行ったあと、砂糖やみりん、野田村産の塩(のだ塩)で味付け、形成し、油で揚げて完成する。商品はこれを1個ずつパック詰めし、冷凍して販売する。
蒲鉾はかむとほどよい弾力があり、適度な塩気の中にドンコのうまみが感じられる。おかずや酒のつまみにぴったりの一品で、土産にも最適だ。解凍すればそのまま味わえるが、焼く、あぶるなどで加熱して食べてもおいしいという。
どんこ揚げ蒲鉾は1箱3個入り(1個あたり42㌘)で、価格は税抜き800円。11日から道の駅さんりくで試験販売し、限定50箱がなくなり次第終了となる。
ドンコは冷凍保存にも適していることから、研究チームでは夏季の低価格となるものを原料として確保し、年間を通じた生産、流通につなげていく考え。
渡部特任教授(75)は「ドンコは冬だけではなく、夏もコンスタントにとれるが、値が付かないという課題があった。大量販売を目指すということではなく、地元の特徴を表す商品として育てていきたい」と話す。
戸田公明市長は「ドンコは食べ方が限られていたが、蒲鉾として新たに開発を進め、おいしいという評価をいただける商品に仕上がった。試験販売で味わっていただき、今後新たな産業として成り立つようになれば」と期待を込める。






