ベルコン用のトンネルが袰下山(住田町上有住)まで貫通 太平洋セの石灰石確保事業
令和元年8月12日付 7面
大船渡市赤崎町に大船渡工場を構える太平洋セメント㈱(本社・東京都、不死原正文社長)が住田町上有住などで展開する袰下山(ほろしやま)開発事業のうち、世田米・大平までを結ぶ全長約7㌔のベルトコンベヤー用トンネルが貫通を迎えた。上有住・めがね橋付近での橋りょう工事は本年度内完成を見込み、盆明け以降は袰下山で破砕室などの整備に入る。セメント原料となる石灰石の長期確保などに向けた事業で、令和3年度からの出鉱開始を目指す。
3年度からの出鉱へ
工事全般の総括を担っている龍振鉱業㈱=大船渡市=の月原孝鉱務部長らが9日に町役場を訪れ、神田謙一町長らに事業の進ちょくを説明。「地上からは見えにくい部分でのトンネル工事が続いていたが、何とかここまできた」などと報告したほか、環境アセスメントや騒音対策、希少動植物保全の各取り組みを示した。
袰下山での開発事業は、平成28年から本格化。ベルトコンベヤーの全長は約7㌔で、めがね橋付近の国道340号や気仙川に架かる橋りょう部をのぞき、トンネルや地下での整備となった。
トンネル部は橋りょうを境として2工区に分けて工事が進み、本年度に入りいずれも貫通。盆明け以降は、ベルトコンベヤーの敷設をはじめとした機械・電気工事が本格化する。
橋りょうは、全長約130㍍のコンクリート製。橋の内部にベルトコンベヤーを通す構造となる。工事は順調に進み、橋りょう部は本年度内の完成が見込まれる。
袰下地区では、トンネルのそばに坑外破砕室を整備する計画。町道からつながる道路整備も終わり、表土除去といった採掘場造成に入っている。
同工場ではセメントや生コン用骨材の原料を採掘すべく、日頃市町長岩と坂本沢、住田町世田米大平の3地区に鉱山を設け、鉱量を確保してきた。このうち、長岩では平成25年3月に採掘を終了。現在は残る2カ所で作業を行っている。
袰下山での石灰石量は約2億5000万㌧と、工場の資源量としては約100年分に当たる量を確保できるという。高品質も見込まれ、製品の付加価値向上などに期待が集まる。
ベルトコンベヤーや破砕機などの整備は令和2年度までを見込み、翌年度から出鉱開始を計画。世田米・大平鉱山との併用出鉱を経て、6年度からの単独出鉱を見据える。
袰下山で産出された石灰石は、現在整備しているベルトコンベヤーと、大平地区から大船渡市日頃市町までつながる既存ベルトコンベヤーで運搬。さらに岩手開発鉄道の鉄路を利用し、大船渡工場まで運ぶ計画となっている。