ベルコン用のトンネルが袰下山(住田町上有住)まで貫通 太平洋セの石灰石確保事業

▲ 貫通した2工区のトンネルをつなぐ形で整備が進む住田町上有住地区の橋りょう部。国道340号や気仙川の上部に架かる

 大船渡市赤崎町に大船渡工場を構える太平洋セメント㈱(本社・東京都、不死原正文社長)が住田町上有住などで展開する袰下山(ほろしやま)開発事業のうち、世田米・大平までを結ぶ全長約7㌔のベルトコンベヤー用トンネルが貫通を迎えた。上有住・めがね橋付近での橋りょう工事は本年度内完成を見込み、盆明け以降は袰下山で破砕室などの整備に入る。セメント原料となる石灰石の長期確保などに向けた事業で、令和3年度からの出鉱開始を目指す。

 

3年度からの出鉱へ

 

 工事全般の総括を担っている龍振鉱業㈱=大船渡市=の月原孝鉱務部長らが9日に町役場を訪れ、神田謙一町長らに事業の進ちょくを説明。「地上からは見えにくい部分でのトンネル工事が続いていたが、何とかここまできた」などと報告したほか、環境アセスメントや騒音対策、希少動植物保全の各取り組みを示した。
 袰下山での開発事業は、平成28年から本格化。ベルトコンベヤーの全長は約7㌔で、めがね橋付近の国道340号や気仙川に架かる橋りょう部をのぞき、トンネルや地下での整備となった。
 トンネル部は橋りょうを境として2工区に分けて工事が進み、本年度に入りいずれも貫通。盆明け以降は、ベルトコンベヤーの敷設をはじめとした機械・電気工事が本格化する。
 橋りょうは、全長約130㍍のコンクリート製。橋の内部にベルトコンベヤーを通す構造となる。工事は順調に進み、橋りょう部は本年度内の完成が見込まれる。
 袰下地区では、トンネルのそばに坑外破砕室を整備する計画。町道からつながる道路整備も終わり、表土除去といった採掘場造成に入っている。
 同工場ではセメントや生コン用骨材の原料を採掘すべく、日頃市町長岩と坂本沢、住田町世田米大平の3地区に鉱山を設け、鉱量を確保してきた。このうち、長岩では平成25年3月に採掘を終了。現在は残る2カ所で作業を行っている。
 袰下山での石灰石量は約2億5000万㌧と、工場の資源量としては約100年分に当たる量を確保できるという。高品質も見込まれ、製品の付加価値向上などに期待が集まる。
 ベルトコンベヤーや破砕機などの整備は令和2年度までを見込み、翌年度から出鉱開始を計画。世田米・大平鉱山との併用出鉱を経て、6年度からの単独出鉱を見据える。
 袰下山で産出された石灰石は、現在整備しているベルトコンベヤーと、大平地区から大船渡市日頃市町までつながる既存ベルトコンベヤーで運搬。さらに岩手開発鉄道の鉄路を利用し、大船渡工場まで運ぶ計画となっている。