被災地の今、世界に発信を 在京外国メディアがツアー 陸前高田の復興状況視察(別写真あり)

▲ 高田松原防潮堤で復興祈念公園の意義などについて岡本副市長㊨から説明を受ける海外メディアの記者たち

 東京都のオリンピック・パラリンピック準備局による海外メディアの被災地ツアーは18、19の両日、本県で行われた。一行は19日に陸前高田市を訪れ、整備中の高田松原津波復興祈念公園を視察。東日本大震災の発生から8年5カ月が経過し、国内外ともに被災地からの情報発信の機会が少なくなっている中、〝復興五輪〟をうたう東京2020大会を契機として市は、「三陸のゲートウェイ(玄関口)」となる新・道の駅高田松原などについてPR。復興に向かう被災地の今の姿を世界に発信してほしいとメディア側に訴えた。

 

オリ・パラ大会開催に向け

 

 東京2020大会を通じて東日本大震災からの復興を支援するため、さまざまな取り組みを展開する東京都は本年度、岩手、宮城、福島の被災3県におけるスポーツイベント等の取材を在京の外国メディアに提案。スポーツの力を通じて元気を取り戻しつつある被災地の姿や地域住民の笑顔を、世界中に発信してもらう機会としている。
 東京オリンピック・パラリンピックの開催がおよそ1年後に迫ったことを受け、今月と来月、被災3県における復興の象徴的スポットをめぐるツアーを東京都が企画。このうち、岩手コースには釜石、陸前高田両市が選ばれ、釜石市では18日、来月開幕するラグビーW杯会場でもある鵜住居復興スタジアムの見学や、野田武則市長らへの取材が行われた。
 三陸鉄道リアス線で気仙入りした一行は19日、陸前高田市を訪問。高田町の市コミュニティホールでは岡本雅之副市長が、市の復興に対する方針や今も復興の途上にある現状、世界中の人々との結びつきによって再生への歩みを進めていること、スポーツが地域住民らを笑顔にしてきたことなどについて紹介した。
 また、高田松原防潮堤では、松原と浜辺、古川沼の再生の取り組みに関してや、二度と津波によって人命が失われることがないようにするためのまちづくり、来月オープンする新しい道の駅と震災津波伝承館を含む復興祈念公園が果たす「鎮魂」と「教訓の伝承」「にぎわいの創出」といった役割について、岡本副市長と県の担当者が説明した。
 参加した外国メディアの記者たちは、防潮堤から見た道の駅をはじめ、奇跡の一本松、ボランティアらによる松原の植樹地での草刈りの様子、養浜され、長さ1㌔㍍ほどにまで復旧している砂浜などを次々と写真やビデオに収め、担当者らに取材を重ねた。
 ブラジルメディアの一員である中場慎一郎さんは、「震災直後にも取材で来たことがあるが、当時はがれきだらけで、今見るとどこがどこだったのかわからない。ずいぶん変化したなと思う」とし、「海中のがれき撤去の技術などについて伝えられたら。働いている人たちの生き生きした顔を見られてよかった」と語った。
 また、メキシコやラテンアメリカなどで放映されているテレビ局に勤めるモンルイ・アルトゥーロさんは「ものすごい速さで、効率的に再建が進んだことがわかる。しかも、都市デザインもきちんと考えられたうえで復旧されていて、美しいまちになっていると思う。津波の被害を軽減するための技術も素晴らしい」と話し、被災地住民に「これからも〝ガンバッテ〟」とエールを送った。
 岡本副市長は「戸羽(太)市長もよく言うことだが、発災から8年以上たった今もこういう状況にあるということを伝えていただき、改めて関心を寄せてもらいたいというのが一番の気持ち。大津波で多くのものを失ったこのまちが、世界中の方々とのつながりによって〝ビルド・バック・ベター(以前よりよい地域への復興)〟を進めているということも発信してほしい」と話していた。