2019岩手県知事選/8年ぶりの競争選に 達増、及川両氏が立候補

 任期満了に伴う岩手県知事選挙は22日に告示された。届け出順に、立憲民主、国民民主、共産、社民の各党が推薦する無所属の現職・達増拓也氏(55)=盛岡市・3期=と、自民党と公明党県本部推薦の新人・及川敦氏(52)=同=の2氏が立候補。それぞれ、盛岡市内で第一声を上げ、17日間にわたる選挙戦の開幕を告げた。投票は9月8日(日)に行われ、即日開票される。

 

 本県知事選は、4月の統一地方選で行われてきたが、平成23年の東日本大震災のため同年から9月に延期。今回は9月10日の任期満了に伴うもので、公選制導入後で19回目、震災後では3回目の実施となる。
 立候補届け出は盛岡市の県庁で午前8時30分から行われ、午後5時に締め切られた。立候補が予想された両氏以外に届け出はなく、一騎打ちが確定。前回の平成27年は無投票で、8年ぶりの競争選挙に突入した。
 両氏は同市内でそれぞれ第一声を上げた。集まった支持者たちを前に、東日本大震災復興とその先を見据えた振興策、少子高齢化に伴う人口減少への対応、県政トップを目指す決意などを力強く訴えたあと、気勢を上げて選車に乗り込んで各地への遊説に向かった。
 投票は、9月8日午前7時から各市町選挙管理委員会設置の投票所で行われる。
 期日前投票はきょうから9月7日(土)までの午前8時30分~午後8時に受け付ける。
 気仙の会場は、大船渡市が市役所本庁第1会議室のほか、同2日(月)からは三陸支所、綾里、吉浜両地域振興出張所(午後5時15分まで)でも実施。陸前高田市は市役所4号棟第4会議室、住田町は町役場交流プラザ。
 県選管によると、 県内の選挙人名簿登録者数は、今月21日現在で106万744人(男50万6080人、女55万4664人)。気仙地区は大船渡市が3万1316人(男1万4913人、女1万6403人)、陸前高田市が1万6661人(男8075人、女8586人)、住田町が4804人(男2345人、女2459人)となっている。
 平成27年8月19日の前回選登録日に比べ、県全体は1万4009人、大船渡市は1146人、陸前高田市は542人、住田町は374人減った。
 18、19歳は県全体で2万1214人(男1万1074人、女1万140人)。大船渡市は556人(男320人、女236人)、陸前高田市は315人(男180人、女135人)、住田町は60人(男30人、女30人)。

 

候補者の公約 ・略歴  届出順

 

 ◇達増拓也氏(無・現)
 【公約】▽東日本大震災津波からの復興▽地域振興▽幸福度の向上―いわて幸せ大作戦▽産業振興▽新時代に対応する地方自治の体制強化
 【略歴】①東京大学法学部②岩手県知事、復興庁復興委員会委員③岩手県知事④盛岡市本町通⑤盛岡市⑥55歳
 【選挙事務所】盛岡市大通2丁目2の13鶴舞ビル1階、℡019・601・6877


 ◇及川 敦氏(無・新)
 【公約】▽東日本大震災津波からの復興▽国際リニアコライダーの実現▽県組織の再編▽少子高齢社会への対応▽教育改革▽産業力の強化
 【略歴】①慶應義塾大学商学部②岩手県議、盛岡市議③学校法人理事長④盛岡市前九年⑤八幡平市⑥52歳
 【選挙事務所】盛岡市中ノ橋通1丁目6の8、℡019・601・7601

 

達増 拓也候補(無・現③)

県民の幸福を守り育てる

 

 国政野党4党の推薦を受け、4選を目指す無所属の達増候補は午前9時ごろ、盛岡市大通の選挙事務所前で第一声を上げた。
 選対統括責任者の森越康雄後援会連合会長、7月の参院選岩手選挙区で初当選を果たした国民民主党の横澤高徳選対本部長代行が、達増候補の3期12年の実績を前面に出し、県政の継続を求めた。同党県連代表代行の髙橋元県議、日本共産党県委員会の菅原則勝委員長、社民党県連代表の小西和子県議、立憲民主党県連代表の高橋重幸盛岡市議、推薦団体を代表して連合岩手の八幡博文会長がそれぞれ激励した。
 立憲民主党幹事長代理の石橋通宏参院議員も応援に駆けつけ、「県民一人一人の暮らしに向き合っている自治体として最前線で頑張っているのが岩手県。全力で応援していく」と力を込めた。
 選対本部長で、国民民主党の木戸口英司参院議員は「岩手から、達増県政から国政の流れを変えようという大きな戦いとなる。これからも達増でいこう」と呼びかけた。
 最後にマイクを握った達増候補は、推薦政党、政党団体をはじめ支援者への謝意を示したうえ、「希望郷いわてを掲げ、危機を希望に変えるべく、県民経済を着実によくするための政策を展開してきた。その間、東日本大震災があり、『オールいわて』で復興に取り組んできた」と県政のかじ取り役を担った12年間を振り返った。
 そのうえで「『危機を希望に』という段階から、『希望』の中身をより確かなものにする新しい段階に進んでいくべき時」と訴え、本年度から10年間を期間とする「いわて県民計画」の基本目標にもある「幸福を守り育てる希望郷いわて」の理念を紹介した。
 震災復興、人口流出・減少を踏まえた地域振興策などを伝え、「県民みんなが、岩手にかかわるすべての人が幸福になることができるような県とする。一人でも多くの皆さんと心を通わせ、岩手が一つになるように17日間頑張っていく」と決意。支持者とともに「ガンバロー」の声を上げ、遊説に向かった。

 

及川 敦候補(無・新)
身近で明るい県政つくる

 

 自民党と公明党県本部の推薦を受け、無所属で臨む及川候補は午前9時ごろ、盛岡市の産業会館近くで第一声を上げた。
 県議やOBでつくる「新しい知事をつくる会」の会長で、選対本部長の中屋敷十氏は「政府与党と連携をとりながら、岩手の活力を取り戻してもらいたい」と激励。
 総括責任者で自民県連会長の千葉伝県議と、公明党県本部の小林正信青年局長、県議会会派・いわて県民クラブの飯沢匡代表は、県内市町村や首長、国との円滑な連携の重要性を訴え、「知事を変えることが岩手の未来をつくるため必要だ」「あまりにも野党に偏った達増県政を正さねばならない」などと強調した。
 さらに、元衆議院議員の黄川田徹氏=陸前高田市=もマイクを持ち、「県と市町村の首長同士の胸襟を開いた意見交換こそが大事だ」とし、「復興期間の10年を終えたあと、そのあとのフレームをどうするかは現場が決め、政府や国会議員につなぐ。果たして現職にそれができるか」と指摘した。
 黄川田氏は達増候補を推薦する立憲民主党県連の顧問職にある。報道陣の取材に対し、「閉塞感がある岩手の政治を変えるきっかけは知事選しかない。県政は国政の枠組みとは違う。与党だろうが野党だろうが是は是として、風通しのいい政治風土にしたい」としたうえ、「県議会OBの一人として、いまの県政が続くことは求めていない。(県連役員を)辞めなさいと言われればその通りになるだろうが、自分から進んで辞めるつもりはない」と語った。
 大きな拍手に迎えられた及川候補は、「いたずらに政府や政権与党と対立を繰り返し、国との対話ができない状況だ」と達増氏の政治姿勢を批判。
 そのうえで、県政刷新の必要性をはじめ、復興の完遂や産業振興などの公約に触れながら、「身近な、明るい、親しみのある、もっと県民に愛される県政づくりを進めていきたい」と強調。支持者とともに「新しい岩手をつくるため頑張ろう」と気勢を上げ、遊説に向かった。