30回の歴史に幕閉じる 七恵氏を顕彰 大船渡ポートサイドマラソン
令和元年9月2日付 7面

佐々木七恵氏顕彰第30回大船渡ポートサイドマラソン大会(同実行委主催)は1日、大船渡市盛町の市民体育館を発着点とするコースで開かれた。節目を迎え、最終回となった大会では、同市をはじめ県内外からのランナー701人が出走。秋晴れに恵まれた中、ランナーたちの力走が地域に活気を呼び込み、大会は大盛況のうちに幕を閉じた。

スターターを務めた陽美さん
秋晴れの中 701人が力走
日頃市町出身で、昭和59年にロサンゼルス五輪に出場した日本女子マラソンの先駆者、故・永田(旧姓・佐々木)七恵さんの活躍をたたえる大会。優良選手の発掘やスポーツ振興の思いから63年にスタートし、地域の観光に貢献するローカル大会としても地域に親しまれてきた。
市や市体協、市陸上競技協会、学校、スポーツ関係者らでつくる実行委員会では、時代の変化に伴う大会参加者減少や運営費確保の課題を受け、同大会を今回で区切ることを決定。最終回を告知しランナーを募集したところ、エントリー数は昨年より160人多い777人。くしくも七恵さんの〝七〟が並んだ。
開会アトラクションとして、大船渡東高校太鼓部が同体育館の玄関前で演舞を披露。その後特設ステージで開かれた開会式では、大会長の戸田公明市長が来場者を歓迎し、七恵さんの功績をたたえつつ「本大会の意義は令和にも引き継がれ、発展していく。ランナーのみなさんには、それぞれの目標に向かい、悔いのない大会にしてほしい」とあいさつした。
競技は10㌔、5㌔、3㌔の3コースを走る計22種目。例年使用していた日本陸連公認コースの一部が道路整備に伴い使用できず、中井大橋交差点と及川冷蔵㈱前を往復するコースが設定された。
競技開始を飾る5㌔コース7種目のスターターを務めたのは、来賓で招かれた七恵さんの夫・陽美さん(66)=神奈川県相模原市。午前9時ちょうどにピストルの音が響き渡ると、ランナーたちが勢いよく走り出した。
天気に恵まれたこの日は、朝から気温が上昇。大船渡は日中の最高気温が30度を超える「真夏日」となったが、ランナーらは、時折吹く涼しい風や給水所などで暑さをしのぎつつ、コース脇に集まったランナーの知人や地域住民らの熱い声援を受けて、爽やかにコースを駆け抜けた。
10㌔高校生男子の部では、大船渡東高校の千葉俊佑君(3年)が1位でゴールのアーチをくぐり、2連覇を達成。「最後の大会で優勝できてうれしい。自己ベストも更新し、楽しんで走り抜くことができた」と達成感に満ちた表情を浮かべた。
また、ゴール付近や給水所などでは、ボランティアで参加した地元の高校生や企業関係者らが運営を後押し。同体育館駐車場では、参加選手や運営関係者に焼きサンマを無料で振る舞うなど、大船渡ならではのもてなしで来場者に笑顔を届けた。
同体育館内には、七恵さんが過去に使っていたジャージーやシューズ、大会のメダル、活躍当時の記事の切り抜きなどを展示したコーナーも開設。七恵さんのファンをはじめ多くの人が足を運び、東京国際女子マラソン優勝や五輪出場、名古屋国際女子マラソン優勝などの足跡に目を向けた。
5㌔女子60歳以上の部にエントリーした佐藤裕子さん(64)=岩泉町=は、七恵さんに憧れ、同大会には初回から30回連続で出場。「年内で一番楽しみにしてきた大会。なくなると思うと少し寂しいが、周囲のみなさんのおかげもあって今日まで参加でき感謝です」と語った。
陽美さんは、気さくで明るい性格だったという七恵さんを振り返り、「彼女は晴れ女で、今回もいい天気になった」とニッコリ。「東日本大震災で被害を受けたあと、復興へ向かう地域からは活気が伝わり、妻の故郷ということもあってうれしい。大船渡のマラソン、スポーツ界が今後発展していくことを願っています」と思いを寄せていた。
集計結果によると、出走者701人のうち、完走したのは693人。気仙勢は12種目で19人4ペアが入賞し、表彰された。
結果は後日掲載予定。