2019陸前高田市議選/26陣営の情勢展望㊤
令和元年9月4日付 1面
集票地図 大きく変化か
混戦模様で票読み困難に
任期満了に伴う陸前高田市議選(定数18)は、告示から4日目を迎えた。今選挙には定数を8人上回る26人が立候補。近年にない混戦模様の選挙戦となっているのに加え、新人が10人と立候補者の3分の1強を占めていることなどから市内の集票地図は大きく変化しているとみられ、各陣営の票読みを難しくしている。4年前の前回選は復興推進の手法などが候補者の訴えの中心だったが、今回は復興事業完了後のまちづくりや行財政運営、議会のあり方など、各候補者の訴えも多岐にわたっている。過去最多となる5人の女性が立候補していることもあり、これまでの選挙とは一線を画す戦いになっている。各立候補者を便宜上、町別、届け出順に展望する。(有権者数は8月28日現在)
票固め難しい激戦区に
高田町
松 田 修 一52無新
丹 野 紀 雄76無現①
佐々木 一 義66無現②
鵜 浦 昌 也57無現②
大 森 俊 行69無新
有権者数は4240人で、市内最大の票田。前回選の町内投票率は50・69%と、町別では最低だった。その後、区画整理事業による高台の整備と住宅再建、災害公営住宅への入居が進むなどしたことから、4年前と比較して人口は352人増加している。
前回は現職2人、新人1人が立候補し、全員当選。今回は現職の丹野氏、佐々木氏、鵜浦氏、新人の松田氏、大森氏の計5人が出馬し、激戦区となっている。
市長選をきっかけに生まれた同市の政治団体・改革たかたの推薦を受け初挑戦の松田氏=鳴石=は、前哨戦からつじ立ちを行い浸透を図ってきた。自身が育った気仙町での支持を見据えるほか、広田町でも集票を図る。元県職員としての経験、民間企業での営業・経営経験を武器に、行財政運営の見直しなどを訴える。
2期目を目指す丹野氏=鳴石=は、元市消防団長としての経験や人脈を生かした地域周りを展開。戸羽太市長の後援会長を務めることから、戸羽氏支持者からの集票も見込む。初挑戦だった前回は545票で14位。候補者の中では最年長で、自身と同じ70代以上の有権者への浸透も増票のカギとなりそうだ。
3選に挑戦する佐々木氏=中和野=は、前回選で2位となる871票を獲得。初挑戦時には1440票でトップ当選を果たすなど、民間企業で培った顔の広さと、親族、同級生らの強固な支持基盤を持つ。今回は他候補からの切り崩しが避けられないが、和野を中心に地元住民のバックアップを大きく取り付ける。
鵜浦氏=鳴石=は、3期目を目指す今回も地元・高田町を中心に、親族のつながりがある竹駒町などで支持を呼びかける。前回選は494票で16位。両町ともに支持基盤の重なる他候補がいるため、前回選よりも厳しい戦いになると覚悟しながら、産業振興や「復興後の創造」を訴え、丁寧に地域を歩いて支持を固める。
新人の大森氏=太田=は、今年2月に行われた市議補選に出馬したが落選。同時に行われた市長選挙の結果を不服として選挙無効などを求め、仙台高裁にも提訴している。今市議選では、東日本大震災発生前における市の安全対策の再検証を求めるなど、震災遺族らに独自の訴えを響かせながら全域を歩く。
長部地区から新・現2人
気仙町
小 澤 睦 子63無新
大 坂 俊68無現②
高台とかさ上げ部での住宅再建などが進んだ背景から、有権者は前回選よりも128人増えて1679人となった。
前回選では出馬した現職2人がいずれも当選。今回は現職の菅野稔氏=4期=が勇退を表明したことから、同氏が前回獲得した569票の行方にも関心が集まる。
今市議選には新・現各1人が立候補。2人とも長部地区在住で、3回連続で今泉地区からの出馬はゼロとなった。
前回の町内投票率は58・16%と低調。長部はもとより、震災で壊滅的被害を受け、今も被災市街地での土地区画整理事業が続く今泉の住民に、どのような訴えを響かせるかも選勢を左右しそうだ。
小澤氏=福伏=は、議会と市民とのパイプ役になりたいと改革たかたの推薦を受けて初出馬し、町内を重点的に歩く。同町からは初の女性候補者であり、母親、主婦、農業者としての立場、知的障害児施設での長年の経験から、子育て世代や第1次産業従事者、高齢者、障害当事者とその家族らへの浸透を図る。
大坂氏=二日市=は前回、458票で18位。住宅再建とコミュニティー形成にかかる論戦を当局と繰り広げ、一定の成果が見えてきたことから、一時は勇退も考えたというが、市の財政見通しといった今後の課題に向き合うため、3期目への挑戦を決めた。復興事業完了後を見据えた市政のあり方を市全域に訴える。
勇退した現職票の行方は
広田町
伊 勢 純52共現②
木 村 聡26無新
蒲 生 哲56無現①
有権者は2722人。4年前より212人減ったが、前回と同じく市内第2の票田。前回選の町内投票率は69・05%で、矢作町に次ぐ高さだった。
今回は現職2人、新人1人が出馬。
前回選で1347票を獲得し、トップで初当選を飾った現職が勇退を決めたほか、4年前に612票獲得して当選した市議が、3年前に死去。これらの票の行方が結果を大きく左右しそうだ。
他地区の候補が〝草刈り場〟と見て広田町での訴えを広げる動きもあり、集票の動向は読みにくい。
3選を目指す伊勢氏=蒲田=は、共産党による地区割りは広田町と小友町で前回と同じ。前回選は465票で17位。8年前から500票以上落としたこともあり、気を引き締めながら、子どもの医療費無償化と所得制限の撤廃、漁業者支援策の拡充などを訴えてきた2期目の活動を説明し、両町を丁寧に歩く。
新人の木村氏=久保=は東京都出身で、立候補者の中で最年少。勇退する三井俊介氏=1期=の後継者として出馬した。同町のNPOで、学生時代から広田町で活動し、住みやすい地域づくりに携わる。市内に親戚筋は皆無だが、移住者や若者の代表として、若い世代や新しい風に期待する層への浸透を目指す。
蒲生氏=小長洞=は前回選で594票を獲得し11位。今回は広田町に入る候補者が多いことから、前回より難しい戦いを覚悟する。地元で票固めを進めるほか、モビリア支配人を経て、震災後は避難所や仮設住宅での運営支援にあたるNPOで活動してきたことから小友、米崎両町と市東部での得票にも期待する。