気仙の34漁港 すべて復旧 東日本大震災で被災 発災から 8年6カ月

▲ 8月に復旧した千歳漁港

 大船渡市三陸町吉浜の千歳漁港で進められていた災害復旧工事が完了し、東日本大震災で被災した気仙の34漁港を含む県内の108漁港がすべて機能復旧した。震災から8年6カ月を経て、漁業活動の生産基盤が整った。

 

漁業活動の基盤整う


 県内111漁港のうち、東日本大震災では108漁港が被害を受けた。
 このうち、気仙では県管理9漁港、大船渡市管理16漁港、陸前高田市管理9漁港のすべてが被災。震災直後から復旧工事が進められ、平成25年度から順次、工事完了を迎えていた。
 県内、気仙管内の漁港で最後の工事箇所となっていた千歳漁港は、外洋に面しているため天候によって海が荒れやすく、市内の漁港の中でも工事の難所となっていた。
 27年12月には「作業船の安全確保が困難で、完成する見込みがなくなった」などとして、受注者から建設工事請負契約履行不能届が出された経緯もあるが、最後に残っていた延長19・2㍍の東防波堤工事が今年8月に完了。当初計画から4年余り遅れ、ようやく復旧を果たした。
 同漁港を拠点にアワビ、ウニ漁を行っている野田澄男さん(70)は「震災後は、波が高くてウニやアワビのシーズンが終わると波の届かないところまで船を運ぶ必要があり、手間がかかっていた。防波堤が復旧して便利になったので、やる気も出てくる」と、待望の漁港復旧を喜ぶ。
 すべての漁港復旧を終え、大船渡市水産課では「被災規模が大きく、復旧には時間がかかってご不便をおかけしたが、これからは存分に漁業活動を行い、水産振興にご尽力いただければ」と話している。
 漁業活動の基盤はすべて機能復旧したものの、一方では地域の漁業者の高齢化が進んでおり、新規就業支援など後継者確保の対策が求められる。
 このほど県が発表した「2018年漁業センサスの海面漁業経営体調査(概数値)」によると、漁業就業者数は大船渡市が1501人、陸前高田市が601人。年齢階層別人数をみると、大船渡市では65~69歳、陸前高田市では75歳以上が多くを占めており、60歳以上の就業者は大船渡市で全体の54・2%、陸前高田市で66・2%となっている。
 これに対し、29歳以下の就業者の割合は大船渡市が6・5%、陸前高田市が6・0%。ともに1割に満たず、就業者の高齢化が顕著に現れている。
 後継者が不在の個人経営体も両市ともに7割を超えている中、復旧した漁港機能の活用に向けては漁業の将来を支える担い手の確保が急務だ。