2019住田町議会選/候補予定者アンケート 「なり手不足」背景は

低報酬、関心の薄さ…
告 示4日前
定数は現状維持望む声多く

 

 任期満了に伴う住田町議会議員選挙(17日告示―22日投開票、定数12)の告示まで、残り4日に迫った。現段階で現職11、新人1の計12人が出馬を予定し、4年前の前回選に続く無投票が現実味を帯びてきた。なり手不足は、全国の小規模自治体に共通する危機感になりつつある。〝課題先進地〟の住田町で、議員を目指す候補予定者は、現状と将来ビジョンをどう考えているのか。東海新報社が予定者12人を対象に行ったアンケート結果からは、議員活動に対する本音と将来へのヒントが浮かび上がる。

 今月30日(月)の任期満了に伴う今回の町議選は、昭和30年の町制施行後通算17回目。前回選は町制施行後初の無投票に終わり、今回も選挙戦にならない可能性が高まっている。
 東海新報社では、これまでに出馬意志を明言した候補予定者に対し、アンケートを実施。12人全員から回答を得た。
■町議の役割は

 なり手不足の前に、そもそも町議会議員の仕事は町政や住民生活において、どうあるべきか。最初に「町議の役割において、最も重要なことは何か」(回答は自由記載)を尋ねた。
 「町の予算が多くの住民に納得してもらえる使われ方をしているかチェックする」
 「適切な行政執行が進んでいるかのチェック」
 半数を超える7人が「チェック」という表現を用いた。町当局は、特別会計を含め年間70億円近い予算規模で、住民サービスや公共インフラの維持、地域振興策などを進めている。
 限られた財源の中で、住民にとって有益な事業であるかや、将来世代に負担を強いるものではないか目を光らせる──。各候補予定者が目指す議員の理想像が浮かび上がる。
 次いで多かったキーワードは「住民意見を吸い上げる」で、5人が挙げた。このほかに「現状では三木・ランバー債権問題の早期解決」「町民の収入アップ」との記載もあった。
■増額望むも…

 近年、なぜ議員を志す人が少ないのか。要因を尋ねると、7人が「議員報酬の低さ」を指摘した。
 「報酬だけでは生活できない。兼業で議員ができる方は限られている」
 「年金制度がないのも要因の一つ」
 住田町の議員報酬月額は19万6000円。県内町村平均の20万6000円を下回るほか、隣接する大船渡市の32万円、陸前高田市の30万円とも開きがある。
 打開策には、5人が「報酬アップ」と回答。ただ、昨年度に町が議会から要望を受けて特別職報酬等委員会に議員報酬の引き上げなどについて諮問したところ、現状維持で据え置きとの方針が示された。
 「議会報告など対話の機会が少ない」
 「まちのことを真剣に考えている町民が少数になっている」
 「定数が減ったため、地域代表(の役割)だけでは難しくなった」
 回答では、報酬以外にもさまざまな要因が浮かび上がった。議会が普段の生活にとって身近な存在であるかを見つめ直し、住民の関心の薄さを感じてきた現職も少なくない。
■議員減の懸念

 県内では、議員数10人の町村議会もある。報酬とともに、人口規模や候補者数に見合った定数のあり方も考えなければならない。アンケートでは「見直しすべきではない」が7人で、「見直しすべき」の2人を大きく上回った。
 「常任委員会活動が停滞する」
 「一部の住民に権限を委譲するべきではない。生活環境の改善を進めるには、現在の議員数が適正」
 「住民意見が反映されにくくなる」
 年4回開かれる定例会での各種審議に加え、常任委員会での活動や各種会合・催事への出席など、活動は多岐にわたる。「議員の職をやってみると、結構忙しい」との意見もあった。
 見直しすべきと回答した候補予定者の一人は「議員報酬引き上げに向けた説得力になる」を理由に挙げた。一方で「どちらとも言えない」と答えたのは3人。定数見直しによる活性化への変化・効果を慎重に見極めるべきといった意見が寄せられた。
■自立の選択

 町の人口は、8月末現在で5411人。6月に行われた住民懇談会では、町当局から毎年100〜150人の人口減少が進む現状に加え、財政状況でも住民福祉にかかる支出増加や、借入金返済が高止まりする将来見通しが示された。
 自立した自治体運営や効率的な行政に向け、自治体合併は「究極の行財政改革」とも称される。候補予定者に「気仙3市町の合併は進めるべきか」と尋ねた。
 「進めるべき」と答えたのは1人のみ。理由には、3市町の合併にとどまらず「(釜石、遠野、大槌を含めた)4市2町を考えるべき」とあった。
 「進めるべきではない」は9人。広域化に伴うさらなる町の衰退や合併のメリットを見いだせないといった指摘に加え、「小さい町だからこそできるまちづくり」の推進を強調する声が目立った。
 「どちらとも言えない」は2人。広域事務組合や「平成の大合併」を検証していく重要性に言及する回答が見られた。
 担い手確保と、住田らしい運営をどう進めるか。町議会の現状は、町内の農林業や住民活動が抱える課題にそのまま当てはまる。
 まず議員たちが、議会内で未来につながる活性化を生み出し、その効果を町全体に広げることが求められる。4年間の運営を担う新たな12人を選出する町議会議員選挙の告示は、4日後に迫っている。