発祥の地で奉納へ あす、南三陸町の例祭参加 大船渡市猪川町の前田鹿踊り

▲ 本番成功に向けて練習に打ち込む前田鹿踊りの保存部員ら

 大船渡市猪川町に伝わる仰山(ぎょうざん)流前田鹿踊りを継承する前田公民館芸能保存部(佐々木正志部長)は、宮城県南三陸町の入谷八幡神社(榊春夫宮司)で15日(日)に開かれる例大祭に参加する。同町は仰山流の発祥の地。メンバーが念願の「里帰り公演」で鹿踊りの奉納を行い、地元芸能のルーツと向き合う。
 同保存部によると、前田鹿踊りは旧本吉郡水戸部村(現・南三陸町字戸倉水戸部)の仰山流の創始者・伊藤伴内持遠から入谷の初代仲立ち・四郎兵衛に伝わり、その弟子が猪川の市兵衛らに獅子舞を指南したのが始まり。1680年代から約300年以上にわたり伝承され、当初気仙に存在した鹿踊り組織の中で最も古い歴史を持つという。
 同神社での鹿踊り奉納は、同保存部の佐々木部長や村上富也前部長らの「地元に根付いた芸能のルーツを知り、現地の人たちと交流を深めたい」という願いが実現したもの。
 2人は今年5月に南三陸町を訪れ、偶然出会った同神社の佐藤富一氏子総代長の仲介で榊宮司と交流。年1回行われる例大祭での鹿踊り奉納を申し出、榊宮司や同神社総代らが佐々木部長らの熱意を聞き入れた。
 佐々木部長は「あてもなく現地に向かったその日のうちに関係者と出会えるとは思っていなかったので、これは何かの導きかと思うぐらいうれしい巡り合わせだった」と振り返る。
 同神社例祭では、約300年前まで鹿踊りが奉納されていたが、宮城の無形民俗文化財「打囃子」がその役目を担うようにり、仰山流の伝承も途絶えてしまったという。
 当日、奉納に向かうのは同保存部の部員ら20人余り。7月から練習を重ねており、12日夜も同公民館に集まり、鼓をたたく感覚や姿勢などを確認した。
 佐々木部長は「亡くなった人の供養や厄払いを行う盆の行事のほか、まちの祝い事などで踊られ、地域に親しまれてきたおらほの鹿踊り。今後の南三陸町との相互交流への願いも込めて、公演を成功させてきたい」と意気込んでいる。
 同神社例大祭は、午前10時から本殿祭と神輿渡御を実施。前田鹿踊りは正午に奉納される予定。