検証─住田町議選/変化に対応できているか 無投票が浮き彫りにした運営課題

▲ 町内各地に設けられたポスター掲示板。今回も〝13人目〟の候補は現れず、無投票に終わった

 2回連続の無投票で幕を閉じた、住田町議会議員選挙。有権者は平成23年以降、身近な議員を選ぶための一票を行使することができていない。深刻化する「なり手不足」はもちろんだが、初の無投票に終わった4年前以降、住民と議員との距離はさらに遠くなってしまったのではないか。再び無風に終わった町議選が浮き彫りにした、町議会議員の役割と課題に迫りたい。
(佐藤 壮)

 

 立候補の届け出を締め切った17日午後5時の役場町民ホールには、選管職員と報道関係者だけがいた。競争選挙になるかどうかを気にする候補関係者の姿はなく、がらんとしていた。
 各陣営は届け出終了後、事務所を置いた自宅前などで出陣式を行い、町内各地で支持を呼びかけた。ポスター掲示板に12人の顔写真が並び、選挙カーからは候補者名の連呼が響き渡ったが、やはり、無投票では緊張感に欠けた。

 

平成最初の選挙と比較すると…

 

 令和初となる17回目の町議選は定数12で行われ、有権者は4800人。平成に入って初めて行われた第10回の町議選は、定数20に対して23人が立候補し、有権者は6548人だった。
 候補1人あたりの有権者数は、今年が400人で、28年前の平成3年は285人。議員数はこれまで、有権者数の減少割合を上回るペースで削減が進められてきた。
 町議会の定例会開会中は、議場に傍聴者向けの「町議会のしおり」が用意される。町議会の役割には「町民の代表として選ばれた町議会議員が、住民の声を町政に反映させるために議論する」と記されている。
 告示前、東海新報社が候補者12人に行ったアンケートでも、議員の役割に「住民意見を吸い上げる」との回答が目立った。住民と行政の橋渡し役を担う議員ではあるが、地域課題や住民の困りごとを伝える役割は、議員だけに限らない。
 地域ごとの行政連絡員や民生児童委員に加え、町は平成29年度から「小さな拠点づくり」に力を入れ、世田米、大股、下有住、上有住、五葉の5地区で地域協働組織が発足した。住民が主体的に地域の課題解決や活性化に動くための環境づくりを進め、行政の各担当課でも住民相談に対応する窓口を設けている。
 アンケートで議員のなり手不足の要因も尋ねたところ、現職から「地域代表だけでは難しくなった」との指摘があった。昭和から平成初期にかけては、議員定数と町内各地域で運営されている自治公民館数がほぼ同じ。公民館数は今も変わっておらず、議員は特定地域の〝代表〟ではなくなりつつある。
 議員はこれまで、時代や地域の変化に順応し、住民意見をくみ上げ、行政に生かす職責を果たしてきただろうか。無投票で改めて浮き彫りになったなり手不足や議会への関心の薄さは、これまでの議員活動に対して住民が無言の疑問を投げかけた結果とも言える。


チェック機能、透明性あるか

 

 当選者の内訳は現職11人、新人1人で、次任期を担う議員の顔ぶれに大きな変化はない。これまでの4年間の議会運営の中では、世田米の木工2事業体に対する計10億円超の債権回収の行方が、論戦の柱であり続けた。
 融資金だけでなく町有林立木未収金の回収が進まない実態が明らかになり、決算特別委員会で「不認定」の結論に達したこともあった。一方で最近は、定例会一般質問でこの問題を取り上げる議員は一部にとどまり、各議員がどのような考えで向き合っているのかが見えにくい。
 木工2事業体の問題に限らず、不定期に開催される議会全員協議会は原則、報道陣にも非公開。どのような当局説明や議論があったかなど、町議会のホームページ上での報告もない。
 行政へのチェック機能も、議員の重要な役割である。アンケートの回答をみても、多くの候補者が責任の大きさを自覚していた。
 ただ、その役割や足跡は、住民に分かりやすいものであっただろうか。議会は、町と一体となって課題解決に取り組む姿勢を掲げる半面、本来の重要な役割がかすんだままの印象があった。
 気仙両市議会は東日本大震災以降、復興施策などに関する特別委員会を設けた。当局や関係者を招き、各種事業の進ちょくを確認しながら課題を探ってきた。町議会の4年間を振り返ると、木工団地の問題に関しては、当局からの説明をもとに論戦を組み立てる〝待ち〟の姿勢が目立つ。
 現職は、これまでの審議内容をふまえ、より深みのある論戦ができる。現任期で〝消化不良〟に終わった反省も生かし、積極的に問題の本質や解決への道筋を明らかにする場もつくっていかなければならない。
 次任期では、さらに住民の議会離れが進むのか、それとも活気ある運営をつくり上げるか。町議会の未来は、12人の行動に託される。