視点/消費税率10%に気仙は㊤

▲ 消費税率引き上げを前にした〝駆け込みセール〟のチラシ

手探り状態でスタートへ
「駆け込み需要」には鈍さ

 

 10月1日から消費税が8%から10%へ引き上げられる。平成元年(1989)の導入以来、税率引き上げは3度目。飲食料品などは8%のままとする軽減税率が適用されるほか、キャッシュレス決済のポイント還元が実施されるのが特徴。商品や支払い方法による税率の違いをはじめ、分かりにくさも指摘される今回の税率引き上げ。実施まで1週間を切ったが、気仙では消費者、事業所とも手探り状態でスタートを迎えそうだ。


 わが国の消費税は平成元年に初めて導入された。所得、消費、資産などの間でバランスのとれた税体系の構築を目指した抜本的税制改革の一つとして盛り込まれた。その税率は当初3%に設定され、同9年(1997)には5%へ引き上げられた。
 この後の24年(2012)、「社会保障と税の一体改革」の中で5%から10%への段階的引き上げの方針がまとまり、26年(2014)に8%となった。
 10%への引き上げは当初、27年(2015)10月に予定されていたが、政府は「世界経済が様々なリスクに直面し、内需が腰折れしかねない状況の中で、あらゆる政策を総動員し、経済再生・デフレ脱却に向けた取組に万全を期すべきである」などとして、2度にわたって延期してきた経緯がある。

 今回の引き上げによる増収分はすべて社会保障にあて、これまでは高齢者施策中心だったものを子育て世代にも充当し、「全世代型」へ転換を図るとしている。
 ▽待機児童の解消▽幼児教育・保育の無償化▽高等教育の無償化▽介護職員の処遇改善▽高齢者の介護保険料軽減▽年金生活者支援給付金の支給──について、一部は所得制限も盛り込みながら展開していこうとのものだ。
 陸前高田市気仙町の桜井ミヨ子さん(85)は「子どもたちのために使われるのは、いいことだと思う」、同町の菅野孝一さん(88)は「世の中にとっていい影響をもたらすのでは」と理解を示す。
 税率引き上げによる家計への負担を減らすため、飲食料品(酒、外食を除く)と新聞(定期購読契約、週2回以上発行)は8%に据え置く軽減税率の適用、非課税世帯や3歳以下の子どもがいる世帯対象のプレミアム付商品券発行などが行われる。5歳と2歳の子を持つ大船渡市三陸町吉浜の寺澤希実さん(32)は、「収入が増えるわけではないので厳しさはあると思う。子ども用のオムツなど必要なものは買わないといけないので、うまくやりくりしたい」と話す。

 26年の5%から8%への税率引き上げ時は、自動車や家電など高額のものを中心に増税前の「駆け込み需要」が見られ、増税後には反動による消費の落ち込みもあった。
 大船渡市内のトヨタ系列の自動車販売店担当者は今回の動向について、「一定の駆け込み需要はあったが、5年前の増税と比べると盛り上がりに欠けると感じている」と話す。
 自動車税の減税、自動車取得税の廃止、「環境性能割」導入などの新制度が消費税増税に伴って始まる。この担当者は「こうした制度も絡んで、消費税増税後の損得は車種や燃費基準によって変わる。お客さまによって関心の高さはさまざまだが、特需のような動きにつながっていないのは、そうした複雑な仕組みが背景にあるのではないか」と分析する。
 住宅については、今年3月末までに契約を締結しておけば、引き渡しが10月以降で税率8%の経過措置が適用されるほか、住宅取得者の負担緩和に向けた「すまい給付金」の拡充なども講じられるとあって、同市内の業者は「復興需要が一段落したこともあるが、状況は落ち着いていると言えるのではないか」と語る。
 また、小売店では「9月に入ってから、ティッシュペーパーなどストックのきく商品がよく出るようになった。山場はこの土、日だろう」とし、「商品によって税率が違うなど、過去の引き上げに比べてややこしい面がある。お客さまに分かりやすく説明できるよう改めて確認し、さまざまな場面を想定した対応も考えておきたい」と表情を引き締める。