甫嶺駅で重要シーン撮影 ドラマ「監察医 朝顔」 大船渡
令和元年9月28日付 3面

フジテレビ系で7月から月曜午後9時に放送され、今月23日に最終回を迎えたテレビドラマ「監察医 朝顔」。東日本大震災を真正面から扱った作品でもあり、被災地の大船渡市では三陸鉄道リアス線・甫嶺駅で、主人公が母を失った震災と向き合う重要なシーンなどのロケが行われた。30日(月)午後9時からは、これまでの物語に新たなエピソードも加えた「特別編」が放送され、再び甫嶺の風景も登場する予定だ。
30日に特別編放送
「監察医 朝顔」は、平成18年に発表された同名マンガ(香川まさひと原作、木村直巳作画)が原作。法医学者の主人公・朝顔がベテラン刑事の父親とともに、発見された遺体の〝生きた証し〟を解き明かしていく物語。
原作の朝顔は、母親を阪神・淡路大震災で失っているが、ドラマ版では東日本大震災に変更。制作側では「一番大事なのは、震災を『忘れない』こと。少しでも世の中の人の心に残ってもらえれば」との思いを込めた。
ドラマでは、主人公の万木朝顔役を上野樹里さん、父・平役を時任三郎さんが務めた。このほか、朝顔の恋人でのちに夫となる桑原真也を風間俊介さん、津波で行方不明になった母・里子を石田ひかりさん、朝顔の上司・夏目茶子を山口智子さんが演じた。
朝顔が法医学者として、一人の女性、母親として成長する日々と並行し、妻、母親の生きた証しさえ奪った震災から、少しずつ前を向こうとする父娘の姿も丁寧に描いてきた。
この中で、三陸町越喜来の甫嶺駅は第1話から里子のふるさとにある「仙ノ浦駅」として登場。最初のロケは5月に行われ、朝顔が震災後初めて平と仙ノ浦に足を運ぶも、母を思い出して立ちすくむシーンなどが撮影された。
9月には、最終回の一場面として、朝顔が家族とともに仙ノ浦を訪れ、新たな一歩を踏み出すシーンのロケが行われた。この時は、下甫嶺海岸の防潮堤から家族そろって海を眺めるシーンなども撮影され、三陸の美しい風景が感動的な作品をもり立てた。
同作の演出を担当した平野眞氏は、「私自身の中で、ホームから防潮堤と海が見えること、波の音が聞こえること、無人駅、まわりに商店や広告などの看板がない場所と決めていたが、甫嶺駅がまさにそれだった」と、同駅を選んだ理由を話す。
さらに、「第1話の三陸鉄道内のシーンは、撮影前日の夜、盛駅に止まっている車両をお借りしてリハーサルを行った。駅の方や見学されている方々から、優しく声をかけていただいたのを覚えている」と振り返る。
また、上野さんは撮影前に陸前高田市を訪問。市民らから震災当時の話を聞くなどして役作りの参考としており、気仙と関わり深い作品となった。
本編は終了したものの、30日の「特別編~夏の終わり、そして~」では、これまでの物語を振り返るとともに、新たな事件、朝顔と桑原の出会いを描いた〝エピソード0〟も交えられるという。
平野氏は特別編について、「この作品には全11話の台本とは別に、朝顔が震災で被災した1週間の台本が存在しており、実は全部放送していない。特別編はこれまでのダイジェストも、新しく撮影したものもあり、今まで見ていただいた方も、見たことのない方もしっかり楽しめる内容になっている」と話している。