独居高齢者向けの整備も 来年度新築の町営住宅 住田町

▲ 各地に構える町営住宅団地。1人暮らし世帯も増加している

 住田町は、来年度の町営住宅整備に向け、基本設計業務を進めている。住宅の新築にあたっては、今回初めて1人暮らし高齢者の入居を想定。独居高齢者世帯は町内全体の約2割を占めており、高齢者らの生活実態に即した居住環境を整え、既存の町営住宅それぞれの間取りに合った適正入居にもつなげる考えだ。町内には民間賃貸住宅が少なく、町営住宅もほぼ空きがない状態が続いてきた中、1期目の折り返しを過ぎた神田町政が掲げる「医・食・住」の充実につながるか、今後の展開が注目される。

 

世田米に計9戸を計画
人口動態変化に合わせ


 町は基本設計業務の受託者を、公募型プロポーザル方式で選定し、提案を今月30日(月)まで受け付けている。
 「具体的なプランニングは求めず、あくまで『考え方』を評価する」とし、提案課題では▽持続可能性の高い施設▽地域産業の振興(林業・木材関連製造業や地域に根ざした技術を利用した構法に対する考え方)▽住宅間の騒音――などを挙げている。
 基本設計の実施要項や仕様書によると、整備計画地は世田米清水沢の旧住田分署敷地内と、国道340号沿いにある火石地内の2カ所。
 清水沢では1人暮らしの高齢者を想定した1LDKの4戸と、子育て世代向けの2LDK2戸。火石では高齢者を想定した1LDK3戸を計画している。独居高齢者向けは緊急通報装置を設け、バリアフリー仕様とする。
 町営住宅は188戸あり、全世帯に占める割合は1割弱で入居率は100%近い状況が続く。町内には民間賃貸住宅が少なく、住宅困窮者だけでなく多様な家族を受け入れてきた。
 平成元年以降の町営住宅は、在来軸組構法による1K~4LDKの木造戸建てを基本とし、平屋建て105戸、2階建て56戸を整備。各団地では子どもを含む家族や単身者、夫婦のみの世帯など多様な構成を受け入れる「ニュータウン」と化した。
 いずれの住宅も「漆喰の真壁と下見板の腰壁に瓦葺きの屋根」を徹底。統一感がある各団地の景観は、町内外の関心を呼ぶ一方、雨漏り対策や断熱性能には課題も指摘されている。
 新たな住宅整備で町が重視する一つが「ライフステージに見合った住環境」。現在、各団地では50代以上の夫婦やきょうだい、単身者で構成する世帯は3割を超えている。
 町営住宅は比較的、同一家族の居住年数が長く、家族構成が変化しても同じ住宅で暮らし続ける世帯が多い。子どもの独立や配偶者の死去などにより、4LDKの住宅に1人で暮らすといった「居住空間と世帯構成のミスマッチ」も出始めている。
 今年4月時点の総世帯数2150世帯のうち、高齢者のみが暮らすのは760世帯で、年々増加傾向。さらに、独居高齢者も400世帯を超える。
 町が独居高齢者向けの町営住宅整備を計画するのは、今回が初めて。これまでの地場産業の活用に加え、町内全体の人口動態変化にも向き合った試みとなる。
 神田謙一町長は就任前から「医・食・住」を強調しており、町はあらゆる世代が不安なく過ごせる住宅政策の充実を見据える。
 神田町長は「町営住宅では住みよい生活環境を提供しつつ、効率的な資産運用を図っていきたい。今後は住分野に限らず、女性が暮らしやすいと感じる政策にも力を入れる方針」と話している。