撤去か存続か 今後の行方は 仮設の上長部グラウンド 陸前高田
令和元年10月5日付 1面
存続か、撤去か──。陸前高田市気仙町上長部の仮設グラウンドの行方に関心が高まっている。同グラウンドは東日本大震災後、元サッカー日本代表の加藤久氏をはじめ多くのサッカー関係者、ボランティアの熱意と支援で芝生化され、市内の重要な運動場所となっている。市内では来春にも高田松原に人工芝のサッカー場と天然芝の多目的広場が完成する予定で、市は仮設グラウンドのあり方についての方針を年度内にまとめたい考え。一部で存続を求める声も根強くあり、市と市民との慎重な議論が必要となりそうだ。
多くの支援で芝生化
市は年度内に方針決定へ
「仮に撤去となれば、たくさんの人の思いまで消えてしまう」。仮設グラウンドの存続を願う陸前高田市サッカー協会関係者の一人は、現在の心境をこう話す。
仮設グラウンドは震災後、校庭に応急仮設住宅ができた旧長部小のための仮設運動場として整備された。
当初は土のグラウンドだったが、加藤氏が芝生化に動き、Jリーグやサッカー女子日本代表「なでしこジャパン」などが全面的に協力。平成24年秋に緑に生えそろった天然芝のグラウンドが誕生した。
同協会によると、整備に携わったボランティアは延べ2万人を超える。加藤氏らの尽力で、敷地内にはクラブハウスが建てられ、大型テレビが設置されるなど徐々に環境が整った。28年には、市と友好協定を結ぶJ1川崎フロンターレとベガルタ仙台との交流戦を目玉とする「高田スマイルフェス」が開催され、市民ら約2800人がプロのプレーに酔いしれた。
国内初のサッカーのナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」(福島県)の芝生化を手がけ、「芝の神様」と称される京都府京都市の松本栄一さん(63)は、整備当初から芝生の育成、管理に携わっている。芝生を植え替える時期に合わせ、現在も年に2~3回、無償でグラウンドを訪ねており、9月下旬にも冬用芝生の種まき作業に汗を流した。
松本さんは「たくさんの善意が集まる復興のシンボル。今後どうするのか市と地元とでしっかり情報を共有しながら決めてほしい」と注文する。
地元の上長部住民でつくる一般社団法人・上長部の郷(さと)の菅野恵二郎代表理事(76)は、率先して日ごろの管理作業に当たってきた。約400万円の自費を投じて手入れ用のトラクターも購入した。
グラウンドは、浸水した農地や民家跡地を活用。菅野代表理事は「高齢化が進んでおり、原形復旧しても農作などは難しい」と話す。
新たなサッカー場は、高田松原の約130㌶の広大な津波浸水地で整備が進む津波復興祈念公園内にできる。近くに整備される野球場と合わせ、同市のスポーツ拠点の目玉となる。
一昨年、旧長部小校庭の仮設住宅が撤去され、仮設グラウンドは児童のための運動場としての役目を終えた。
しかし、市内で芝生のある運動場がほかにないため、市はその後も土地借用料などを捻出し、維持してきた。高田松原のサッカー場が完成すれば、仮設グラウンドの利用頻度が減り、必要性が薄らぐことが見込まれる。
市地域振興部スポーツ交流推進室は現在、仮設グラウンドの今後のあり方などについて土地所有者らを対象にアンケートを行っており、これを踏まえて方針を検討することとしている。






