財政運営状況などただす 産業振興策でも論戦 陸前高田市議会一般質問

▲ 一般質問初日は5議員が登壇

 陸前高田市議会の令和元年第3回定例会は8日、通告に基づく一般質問が行われた。鵜浦昌也(創生会)、及川修一(無会派)、伊勢純(日本共産党)、伊藤勇一(碧い風)、菅野広紀(同)の5議員が登壇。複数の議員が市の財政状況や今後の財政運営の見通しについて尋ねたのに対し、市は実質公債費比率や各種基金残高などを挙げたうえで、「健全な財政運営を行えている」という認識を示した。また、産業振興にかかり、地域の若者の雇用創出や離職率の低下を図るための施策、新たにオープンした道の駅「高田松原」の利用状況と中心市街地への誘客などについても、議員と当局が論戦を交わした。

 

 市の財政状況について質問したのは、及川、伊勢、伊藤、菅野の4議員。一般財源の規模に対する公債費の割合を示す「実質公債費比率」や、将来負担すべき負債の大きさを表す「将来負担比率」の推移、財政調整基金、市債管理基金の積み立て状況などを踏まえ、今後の財政見通しを尋ねた。
 このうち実質公債費率については岡本雅之副市長が、「平成28年度が13・7%、29年度は14・2%、30年度は15・0%と微増したが、いずれも早期健全化基準と言われる25・0%は大きく下回っており、一定規模の地方債発行になんら差し支えないものと考えている」と答弁し、財政状況は安定しているという認識を示した。 
 村上幸司総務部長は、350・0%を超えると早期健全化基準となる将来負担比率について、「充当可能な基金の残高などをある程度確保していることから、現在ではこの比率が算定されていない」と説明。令和3年度以降も基金残高の維持を図ることで、将来負担比率は算定されないものとした。
 また、財政調整基金などの積立額が震災前の約10倍に膨らんでいる状況について「要因は何か」と尋ねた菅野議員に対し、黒澤裕昭財政課長は「財調や市債管理基金については、前年度決算剰余金の2分の1や、復興交付金を積み立てるなどしている点が大きい。また、ふるさと納税による寄付金が毎年4億円を超えており、これも割合としては高い」と説明した。
 市の〝貯金〟と言える財政調整基金に余裕がある状況を踏まえ、及川、菅野の両議員は「過疎債を使う前に、基金からさまざまな繰上償還を行ってはどうか」「返済に充てることで、基金の規模適正化を図ることも必要」などと指摘。
 これに対し黒澤課長は「過疎債の場合は7割が国から交付金として戻ってくる。基金は使ったらそれで終わりなので、基金残高を減らしていくよりは、過疎債を活用することも適切と考えている」「普通交付税の算入ができないものについて、優先的に基金から繰上償還するという考えもあるので、双方を適正に利用していきたい」とした。 
 伊勢議員は「財政状況については専門用語も多く、説明が難しい。市民に分かりやすく伝えるためにどのような方策を検討しているか」と確認。同課長は「小学校高学年から中学生が読んでもわかる内容にかみ砕いたうえで、市の広報へ継続的に掲載していくということを検討している。本市独自の取り組みについても、内容とともに財源を含めた執行状況を示していきたい」とした。
 産業振興にかかり、この日トップ登壇の鵜浦議員は、市内3カ所の工業団地への企業誘致について質問。「誘致にあたっては、ある程度業種を絞るべきでは」という同議員の指摘に対して戸羽太市長は、「第1次産業に付随するものが、この地域には合っていると考える。業種の幅を狭めるわけではないが、こちらからアプローチしていく場合にはそういう観点からお願いしていきたい」と答弁した。
 同議員は、若者の離職率の高さに触れたうえで、キャリア教育の現状などについても質問。木全洋一郎商政課長は、名古屋市の支援を受けて9月に市内事業所で実施した「オープンファクトリー」の取り組みを紹介し、「離職の要因は、就職先に持っているイメージと現実とのミスマッチも大きい。実際にその企業でどんな仕事をしているのかを知ってもらう、体験型プログラムが大事。オープンファクトリーのように、地元企業と生徒とを結びつけるプログラムを提供していきたい」と述べた。
 このほか、伊勢議員は「母親だけでなく、現在は父親からも子育てと仕事の両立に関心が高い。子育て世代の働きやすさも離職率の低下につながるのでは」とし、今後の対応をただした。木全課長は「業務を切り出し、1時間、2時間といった時間内での〝プチ勤務〟を実現するなど、企業にも働きかけ、働きやすい環境を総合的につくっていきたい」とした。
 及川議員は、道の駅オープン直後の利用状況や、今後、中心市街地へどう誘客を図っていくかなどについて当局の考えをただした。
 阿部勝地域振興部長は「オープンから9日間で約3万8000人が利用し、予想を上回る滑り出しととらえている。秋の行楽シーズンにはさらに多くの来場者が見込まれる」とし、11月2日(土)、3日(日)に中心市街地で開催される「市産業まつり」の割引券を道の駅で配布することや、中心市街地に設置された『まちづくり情報館』のリニューアルが予定されていることなどを説明した。
 また、阿部部長は「ほんまるの家や、建築中のアムウェイハウス、今後整備される博物館は、いずれも著名な建築家によるもので、建物としても魅力がある」とし、道の駅一帯と市街地が相乗効果でにぎわっていくような方策を今後も探っていきたいとした。 
 伊藤議員は、八幡平市と陸前高田市においてふるさと納税事務代行業務を請け負う同市の一般社団法人の代表理事ら2人が不正競争防止法違反容疑で逮捕され、その後、代表理事と法人が起訴された件について質問。「顧問弁護士と相談のうえ、来年3月末まで業務委託を継続すると説明を受けたが、受注者側の弁護士と契約解除に関する協議をすべきでは」と対応をただした。
 戸羽市長は「当然、相手側ともその話をしている。相手側の弁護士、こちらの顧問弁護士ともに『契約解除は難しい』という見解で一致しており、『年度内は継続せざるを得ない』という判断に至った。来年度については、引き続き同じ法人と契約するという考えは持ち合わせていない」と述べた。