現橋の高欄部 一部設置へ 1年余の協議が終了 昭和橋景観検討委員会  住田

▲ 橋周辺部のデザインやこれまでの協議結果などを確認した最終回の委員会

 県大船渡土木センター住田整備事務所と住田町による昭和橋景観検討委員会(委員長・柴田久福岡大学工学部教授、委員8人)の最終会合は10日夜、町役場で開かれた。この日は、橋周辺のデザインなどについて協議。右岸側(役場側)に現橋の高欄部を一部設置することで、サクラや蔵並みと調和した風景を残す方針などを確認し、1年余りの協議を終えた。年内に設計を終え、その後4年程度で新橋完成を目指す。

 

蔵並みとの調和継承

蔵並みの対岸に現橋高欄部を設置する設計となる見込み。会場では模型も用意された

 気仙川に架かる住田町管理の昭和橋は、県による治水対策の一環での架け替えを控え、県と町は昨年9月から、景観や橋上利用を含めたまちづくりなどの観点で計画案を審議する検討委員会を設置。現在は歩道がない形状だが、これまでの議論では、高欄部の景観性を確保できるデザインの自由度などを考慮して「1車線+2歩道」の整備を提言する方針でまとまった。
 5回目の会合には、柴田委員長をはじめ委員全員が出席。事務局から「昭和橋および周辺のデザイン」について説明が行われた。
 蔵並みが続く左岸側は架け替え後、管理用道路と護岸の間に空間が生まれる見込み。勾配差をつけて車の乗り入れを防ぎ、さらにサクラの植樹や緑地整備を進める方針を確認した。
 右岸側(役場庁舎側)も車の乗り入れを防ぐ対策を施すほか、現在植えられている古木のサクラは撤去し、新たなサクラを植える見込み。付近に現橋の高欄部を設置し、サクラと蔵並み、古き良きたたずまいがある現橋の風景を後世に残すデザイン案が示された。
 現在の高欄には、昭和20年の空襲で弾片が貫通したとされる穴があり、昭和の記憶や生活文化を受け継ぐ役割も担ってきた。同センターでは今後、この穴がある部分の高欄の設置を検討する。委員からは橋の入口部分にある親柱の活用や、付近に案内看板の設置を求める意見が寄せられた。
 昭和橋周辺は渓流釣りでにぎわうポイントでもあり、石積状の護岸に設置される階段配置のあり方なども確認。1年余の議論を経てまとまった、新橋高欄部の実物モデルも示された。
 協議を終え、柴田委員長は「みなさんのご尽力により、住田町の皆さんが愛着を持つ昭和橋を引き継ぐ、洗練されたすばらしい橋が架けられることになった。これからもしっかりと、橋の架け替えを盛り上げていきたい」と述べた。
 年内までに設計を完了し、用地調整などに半年~1年、工事は3年程度が見込まれる。整備に合わせ、現橋の下流部には歩行者用の仮橋を設置する。総事業費は11億円程度で、基本的には県が治水対策として工事を進めるが、町は歩道設置といった現橋からの〝機能拡張分〟の財源を負担する。
 町によると、新橋の名称は、完成に合わせて決める方針。現在の橋名も候補としながら広く住民公募を行うほか、選考にも住民が入り、名称案を答申する。また、現橋の解体前には「夢あかりイベント」などを行うことにしている。