台風19号 きょう列島上陸へ あす明け方、気仙に最接近か

 過去最強クラスの台風19号は11日、非常に強い勢力を保ったまま日本の南海上を北上し、12日に東日本に接近、または上陸するおそれが高まっている。気象庁は、1200人以上の死者・行方不明者を出した昭和33年の台風に匹敵する記録的大雨の可能性があると発表。気仙には12日夜遅くから13日明け方に最接近するとみられ、県内の13日までの24時間雨量は多いところで200㍉を超えると予想。気仙の各自治体は12日にも災害警戒本部をそれぞれ立ち上げる想定で準備を進めている。甚大な影響が出ることが見込まれ、人命第一の最大の警戒が必要だ。


過去最強クラスが北上

暴風、大雨に最大の警戒を

 

 気象庁によると、台風19号は11日午後3時現在、八丈島の南南西約550㌔の海上にあり、時速25㌔で北北西に進んでいる。中心気圧は925ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は50㍍、最大瞬間風速は70㍍となっている。
 台風は次第に北東に進路を変え、勢力を保ったまま12日夕から夜遅くにかけ、東日本にかなり接近、または上陸する見通し。気象庁は11日、昭和33年に伊豆半島の狩野川が氾濫し、死者・行方不明者1269人、民家全半壊4000棟以上の被害が出た「狩野川台風」に匹敵する大雨になる恐れがあると発表し、警戒を呼びかけた。
 盛岡地方気象台によると、本県は12日夕から警報・注意報級の激しい雨が降り、13日にかけて大雨となる見込みで、局地的に猛烈な雨の降るおそれがある。13日午後6時までの24時間雨量は、多いところで200㍉~300㍉と予想している。
 また、12日夜から13日は暴風、海上ではうねりを伴って大しけで、特に13日は猛烈なしけとなる。12日に予想される最大風速は18㍍、最大瞬間風速は30㍍、波の高さは7㍍となっている。
 これを受け、同気象台は「明るいうちに安全な場所に移動するなど、風や雨が強まる前に早めの準備、対策を」と注意を喚起している。
 過去最強クラスの台風襲来で、漁業や農業者らも気をもむ。カキ養殖を営む陸前高田市小友町の藤田敦さん(54)は11日、今後の大しけを見越し、14日に出荷する分のカキを前倒しして水揚げした。
 本格的に出荷するのは11月以降を見込み、藤田さんは「カキが落下しないか不安だ。生産者数も限られ、ロープが絡まるなど養殖施設の復旧作業も本当に大変。被害が最小限にとどまるのを祈るしかない」と深刻な表情で話した。
 気仙3市町の自治体は、台風接近を前に対応に追われている。
 大船渡市は11日、防災行政無線を通じ、市民らに注意を喚起。早いうちから台風に備えるよう呼びかけた。
 12日は、正午に庁内に災害警戒本部を設置する計画。設置後は各地区本部の立ち上げと避難所開設の準備を進め、市民らへ避難準備を周知する。
 市が12日午後5時からリアスホールで予定していた映画「二宮金次郎」上映会と、13日午前9時から市役所で行うとしていた「地域課題創造ワークショップ」は延期に。日時は未定で、決まり次第周知するという。13日の立根、赤崎両町の町民運動会も中止となる。
 陸前高田市は10、11の両日、今後の対応を確認。情報収集を行うとともに防災行政無線などで注意を呼びかけた。12日午後1時には災害警戒本部を立ち上げる方針を決め、これを前に避難所の開設を想定し、配備職員、備蓄物資など確認も進めた。
 住田町は11日、対応を協議。12日は気象庁から警報発表が出なくても、午前9時には庁内に災害警戒本部を立ち上げる。
 同日午後には、町内5地区ごとに避難所を開設する計画。町では「(大船渡市に上陸した平成28年の)台風10号を超える降水量のおそれがある」とし、大雨や河川増水への警戒を強めている。
 5地区ではそれぞれ、13日に運動会やクッブ大会を計画していたが全地区とも延期・中止が決まった。上有住の滝観洞では、12~14日を臨時休業とする。
 大船渡労働基準監督署(渡辺幸輝署長)は11日、労働災害防止団体などに対し、台風19号接近に伴う労災防止対策の徹底についての要請書を交付した。
 交付先は、岩手労働基準協会大船渡支部、県建設業協会大船渡支部、陸前高田市建設業協会、気仙地区復旧・復興関連大規模建設工事安全衛生等連絡協議会の4団体。
 ▽悪天候時の作業禁止▽気象状況の把握▽悪天候後の点検──のほか、不要不急の屋外作業などをできるだけ控えること、通勤時間帯や通勤方法への配慮などについても、会員に周知するよう求めた。
 三陸鉄道リアス線は、13日の始発列車から終日運転を見合わせることを決めた。線路の安全点検を行ったうえ、14日は通常運行する計画。JR大船渡線BRTは現時点で、12日夕から運転を見合わせる可能性があるとし、13日は始発から運休することとしている。