3市町全域に避難勧告 台風19号きょう最接近 気仙

▲ 台風接近の影響で風が強まり、白波が立つ海岸=陸前高田市

 大型で非常に強い台風19号の北上に伴い、気仙地方は12日、大雨や暴風、大しけに見舞われた。気仙3市町は災害警戒本部を立ち上げ、それぞれ全域に避難勧告を発令。3市町合わせて計32カ所に避難所を開設し、同日午後4時現在、合わせて約230人が身を寄せているが、人的被害は報告されていない。台風は13日未明から明け方にかけて気仙に最接近する見通しで、同日はさらに猛威を振るうとみられる。県内の総雨量は多いところで300㍉〜400㍉と予想され、盛岡地方気象台は厳重な警戒を呼びかけている。(7面に関連記事)

 

大雨、暴風、大しけに警戒を

 

 気象庁によると、台風は12日午後3時現在、静岡県下田市の南西約90㌔の海上にあり、時速35㌔で北北東に進んでいる。中心気圧は945ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は45㍍、最大瞬間風速は60㍍。
 気仙は同日、東北に停滞している前線の影響により雨で、夕方からは台風接近により南から暖かく湿った空気が流れ込むため大気の状態が不安定となり、非常に激しい雨が降るところも。海上は強い風が吹き、白波が立った。
 同気象台によると、同日午後4時現在、大船渡の最大瞬間風速は17・3㍍、24時間雨量は34・5㍉を観測。
 気象庁は同日午後5時までに、大船渡、陸前高田に暴風、波浪の各警報、住田に暴風警報を発令し、3市町に大雨、雷、濃霧などの各注意報を出している。
 県は同日午前9時、災害警戒本部を設置。気仙3市町も事態悪化に備えて警戒態勢をとり、情報収集に当たった。
 大船渡市は同日正午に災害警戒本部を設置。市内11地区に地区本部と避難所も開設し、市民らへの注意喚起や避難者への対応、情報収集などにあたった。
 午後2時には市内全域の1万4980世帯、3万6040人に「避難準備・高齢者等避難開始」を、同4時には避難勧告を発令。
 市によると、同3時30分現在で9地区の避難所に72人が避難。市内2カ所の福祉施設には、福祉避難所も開設された。
 このうち、猪川地区の避難所となった猪川小学校には、避難準備の発令に合わせて地域住民らが次々と避難。
 避難した70代の女性は、「1人暮らしで自宅の近くに川があり、早めに避難所に来た。心配だったので避難ができ、近所の方にも会えたのでほっとしている」と話していた。
 同日は、リアスホールが同2時から、市立博物館が同3時からそれぞれ臨時休館し、市体育協会が管理する公共施設も午後以降利用を停止。商業施設でも、閉店時間を繰り上げるなどの措置がとられた。
 道路では、日頃市町の市道沼川大森線と、三陸町綾里の県道主要地方道大船渡綾里三陸線(白浜〜小石浜)を事前交通規制とした。
 陸前高田市は12日午後1時に災害警戒本部を設置し、同2時、全域の7612世帯、1万8959人に「避難準備・高齢者等避難開始」を発令。同4時現在、14カ所に避難所を開設し、避難者数は計55人。同5時には避難勧告を発令した。
 高田町の高田地区コミュニティセンターに避難した町内の男性(74)は「台風15号の時は自宅にいたが、今回は早めに避難した。何事もないことを祈っている」と話した。
 同本部によると、午後4時時点で人的・物的被害の報告はない。同日、公共施設などの多くが正午から休業・休館に。13日は、道の駅「高田松原」や震災津波伝承館、市立図書館、夢アリーナたかた、スポーツドーム、黒崎仙峡温泉、気仙大工左官伝承館・杉の家はこね、玉乃湯、二又復興交流センターが終日休業・休館となる。
 住田町は12日午前9時に災害警戒本部を設置。午後3時には災害対策本部に移行し、町内全域の2155世帯、5406人に「避難準備・高齢者等避難開始」を発令した。
 避難所は町役場と大股、下有住、上有住の各地区公民館、五葉集会センターなどに設置。町社会福祉協議会は、下有住のデイサービスセンターとだてに福祉避難所を設けた。同3時の時点で各公民館などに計80人が身を寄せていたが、発令を受けてさらに高齢者が家族や社協職員らとともに避難行動を始め、同4時段階では計106人に増えた。
 同4時45分には、避難勧告に切り替え、さらに警戒を強化。各避難所だけでは避難者が収まりきらない事態も想定し、世田米の社会体育館や下有住の生涯スポーツセンター、上有住の有住小体育館でも受け入れの準備を進めた。
 町役場に避難した世田米の吉田元男さん(84)は「家を開けてくることにも不安はあるが、早めに動こうと3時過ぎに家を出た。川沿いに住んでいるので、増水が心配」と話していた。
 気仙川に近い町住民交流拠点施設・まち家世田米駅が同日午後から休館に。商店街沿いの各店舗もノボリなどをしまいこみ、暴風雨に備えた。
 JR大船渡線BRTは12日正午から、三陸鉄道リアス線は同日午後3時以降、運転を見合わせた。13日はともに始発から終日運休することとしている。
 三陸沿岸道路の陸前高田長部インターチェンジ(IC)─吉浜IC間は、13日未明から午前6時ごろまで通行止めとなる可能性がある。
 台風は、13日未明から明け方にかけて、気仙に最接近するとみられ、局地的に1時間に80㍉の猛烈な雨が降るおそれがある。同日正午までの24時間雨量は多いところで300㍉、最大瞬間風速は45㍍と予想されている。