台風19号、猛威振るう 気仙に初の大雨特別警報 冠水や土砂崩れ相次ぐ

▲ 土砂崩れによって孤立した集落も=大船渡市三陸町越喜来

 大型で強い台風19号の接近を受け、気仙地方は12日夜から13日明け方にかけて、大雨や暴風に襲われた。気象庁は、重大な災害が発生する恐れがあるとして気仙3市町に対して初の「大雨特別警報」を発令。大雨・洪水警戒レベルで最高の5に相当し、気仙では県が観測する3河川で氾濫危険水位を超え、各地で冠水や土砂崩れ被害が相次いだ。気仙3市町によると、避難者数は最大計1506人。人的被害の報告は入っていない。13日朝には大雨の峠を越え、次第に晴れたが、気象庁は、地盤が緩んでいる地域もあるとして、引き続き、土砂災害、河川の増水などへの注意を呼びかけている。(3、7面に関連記事あり)

 

避難者は3市町で1506人

人的被害なし

 

 気象庁によると、台風は12日午後7時ごろに伊豆諸島に上陸し、その後、13日未明から明け方にかけて気仙に最接近した。
 気仙は12日夜から強い風雨に見舞われ、13日午前0時40分、3市町にそれぞれ大雨特別警報が出た。その6時間後、いずれも大雨警報に切り替わった。
 岩手県と盛岡地方気象台が共同発表する気仙3市町に対する土砂災害警戒情報と大雨警報は、13日午後2時ごろまでに解除された。
 同気象台によると、同日の最大瞬間風速は大船渡で31・6㍍。陸前高田の24時間雨量は157・0㍉と、10月としては観測史上最多(観測10年未満)を記録した。大船渡は190・0㍉、住田は131・0㍉だった。
 県によると、観測する気仙5河川のうち、気仙川、盛川、大股川で13日未明以降に氾濫危険水位を超えた。その後、雨脚が弱まり、各河川で水位も下がった。
 一方、三陸鉄道リアス線は12日午後3時から、JR大船渡線BRTは同7時から、それぞれ運転を見合わせ、13日はともに始発から終日運休した。同日午後3時現在、路線の点検や整備に時間を要しているため、14日はともに始発から見合わせる可能性もあるという。
 また、東北電力によると、12日午後9時以降に大船渡市の末崎町、三陸町越喜来などの約1800戸、陸前高田市の小友町、広田町などの約1900戸で停電が発生。13日午後2時50分現在、両市合わせて約3300戸が復旧した。
 停電の原因は、飛来物や倒木による配電線の断線など。同日中の復旧が困難な地域もあるという。

 

集落や民家の孤立も発生
大船渡

 

 大船渡市は、12日午後6時に災害警戒本部から災害対策本部に移行。13日午前0時40分の大雨特別警報発表後には市民らに避難や安全確保を周知し、被害などの情報収集に当たった。同日午後3時現在で人的被害はないものの、市には家屋への浸水、民家や道路への土砂流入、倒木などの情報が入っているという。
 県の河川情報システムによると、盛川の権現堂橋では12日午後8時ごろから水位が上昇。13日午前0時には1㍍を超えた。
 市は同じ時間に、市内全域1万4980世帯、3万6040人に発令していた避難勧告を避難指示(緊急)に切り替え。市民らに対し、命を守る行動を取るよう呼びかけた。
 権現堂橋の水位は、同2時には氾濫危険水位を超える1・64㍍を観測。同3時には最も高い1・68㍍となったが、氾濫はなかった。
 市が市内11地区に開設した避難所には、ピーク時で518人が身を寄せたが、13日午前8時までに全員が帰宅。市は午後1時40分の土砂災害警戒情報解除に伴い、同2時に避難指示を解除し、各地区本部と避難所を解散した。
 市によると、同3時現在での主な被害は、床下浸水が3カ所、民家への土砂流入2件、倒壊などの建物被害1件という。赤崎町、日頃市町、三陸町越喜来、同町吉浜の4地域では、土砂崩れなどによる集落、民家の孤立も生じ、赤崎と日頃市は解消、三陸町の2地域は対応中となっている。
 また、東海新報社の取材では三陸町綾里字岩崎地内で床上浸水1件、同町吉浜字中井地内で民家への土砂流入1件が分かっている。
 市によると、道路では赤崎町の市道蛸ノ浦合足線で倒木が生じたほか、三陸町吉浜字中井地内の国道45号(旧道)や県道吉浜上荒川線では土砂や倒壊した木などが流入するなどの被害が発生。同日正午現在、土砂崩れや倒木等が発生した道路は104件に上り、市は復旧に向けた作業を進めている。

 

大雨で冠水した旧一本松茶屋の敷地=陸前高田市

のり面崩壊や家屋の浸水も
陸前高田

 

 陸前高田市では12日午後2時、市内全域に「避難準備・高齢者等避難開始」を発表し、市内のコミセン、地区公民館、小中学校などに避難所を開設。同10時20分には土砂災害の危険性が高まったことから、全域に「避難指示(緊急)」を発令した。
 避難所には最大で223世帯472人が避難。13日午後1時40分に土砂災害警戒情報が解除されたことから、避難所はすべて閉鎖された。
 市内では、13日未明から各地で小規模なのり面崩壊や倒木が起きたといい、13日は市民からの情報提供が市防災局防災課に相次いだ。家屋の被害は床上、床下浸水が数件ずつ報告された。人的被害はなかった。
 また、台風の大雨によって、米崎町沼田交差点付近をはじめ、市内複数個所の道路が冠水被害を受け、一時通行不能となるところもあった。国道45号と同340号の交差点付近にある気仙町の旧一本松茶屋は敷地内が冠水。今月いっぱいで閉店が決まっている敷地内のカフェも休業を余儀なくされた。 
 台風の接近に伴い、市立図書館、市総合交流センター・夢アリーナたかたなどの公共施設、道の駅「高田松原」は12日正午から休館とし、13日は全日閉館の措置をとった。黒崎仙峡温泉、気仙大工左官伝承館、玉乃湯、二又復興交流センターなどの施設も12、13日を臨時休館するなどした。

 

「氾濫危険水位」を一時超過した気仙川・昭和橋周辺=住田町

2河川で氾濫、危険水位超過
住田

 

 住田町では12日午後3時から、町内5地区に避難所を開設。13日午前0時40分の大雨特別警報発表を受け、世田米の社会体育館に避難所を追加開設するなどして警戒にあたった。
 世田米を流れる大股川の高屋敷観測所では同2時に、気仙川の昭和橋では同3時にそれぞれ氾濫危険水位を超過。昭和橋は橋げたが見えなくなるまで上昇したが、両岸の住宅地や公共施設、商店街などへの浸水は免れた。
 避難者は全地区合わせて516人。このうち、気仙川沿いに構える特別養護老人ホーム「すみた荘」の入所者70人は、12日午前6時過ぎから13日午後1時ごろまで、高台の世田米中体育館に身を寄せた。同施設では避難確保計画を策定して以降、初めての大規模避難となったが、混乱は見られなかった。
 世田米中からの〝帰宅〟では、同施設だけでなく、社会福祉協議会の車両も活用。職員や家族会関係者、町職員らが連携し、車いすの高齢者を次々と乗せたほか、寝具やいすなどの物品も撤収し、1時間余りで終了した。
 家族会の吉田洋一会長(69)は「絶対に被害がないとは言い切れない。一度こういう経験をしておくと、今後に必ず生きる。やはり、先手で対策を打つことが大事」と話していた。
 道路では、上有住土倉の県道釜石住田線で土砂崩れがあり、片側交互通行の措置がとられた。家屋への土砂流入や床上、床下浸水の被害情報は入っていない。