気仙の誇り プロでも輝け 喜びと激励の声、続々と

▲ プロ野球での活躍に古里の期待が高まる佐々木投手(7月の全国高校野球選手権岩手大会3回戦・対一戸)

 17日のプロ野球ドラフト会議で、1位指名した4球団による抽選の結果、千葉ロッテマリーンズと契約交渉することが決まり、自らの夢の実現へ大きな一歩を踏み出した大船渡高3年の163㌔右腕・佐々木朗希投手。「令和の怪物」を育んだ古里の気仙は祝福ムードに包まれ、プロの舞台での活躍に期待が高まっている。

 

佐々木投手の活躍期待

祝福ムード広がる

 

 佐々木投手は陸前高田市出身。東日本大震災で被災して大船渡市に住まいを移し、猪川小から大船渡一中、大船渡高と進んだ。
 身長190㌢、体重86㌔の恵まれた体格。左足を大きく上げるしなやかなフォームから投げ下ろす直球のスピードと切れは高校球界で群を抜き、今年4月のU─18ベースボールワールドカップ日本代表の研修合宿では高校生最速となる163㌔を記録した。
 「令和の怪物」「高校生史上最高の素材」として国内外の注目を集め、今ドラフト会議では、1位指名選手としては最多の4球団が競合。「12球団どこでも頑張りたい」と話していた同投手。今後、〝大当たり〟のくじを引き当てた千葉ロッテとの契約交渉に臨む。
 気仙出身者のプロ野球ドラフト指名は、大船渡市赤崎町生まれで、仙台育英高、青山学院大を経て平成14年に8位指名でヤクルトスワローズに入団した志田宗大さん(現・読売ジャイアンツスコアラー)以来。古里は喜びに沸き、プロの舞台での活躍を期待する声が上がっている。
 大船渡高校OBで、昭和59年に春夏連続で甲子園に出場し、主軸として活躍した今野一夫さん(53)=大船渡市盛町=は「何度か試合を見たことがあるが、速球もさることながら変化球も素晴らしかった。ポテンシャルもすごい」と能力の高さと素質を評価。 
 そのうえで「これからは高校球児ではなく、プロフェッショナルとして見られることになり、周囲の期待も大きく、ハードルも高くなる。厳しい世界ではあるが、プロの体と心をつくって対応していき、将来は日本を代表する選手になってほしい」と激励する。
 佐々木投手の後輩となる猪川野球クラブスポーツ少年団前主将の山本康介君(猪川小6年)は、「プロでもぜひ活躍して、どんなバッターからも三振をとれるようなピッチャーになってほしい。地元の高校で実力を発揮できるということを示してくれたので、自分も野球を続け、限界に挑戦しながら頑張りたい」と意欲を燃やす。
 陸前高田市高田町のササキスポーツでは、佐々木投手と大船渡高でバッテリーを組んだ及川惠介捕手(3年)のミットのメンテナンスを手掛けてきた。その頻度が通常の場合に比べてかなり高いことからも、佐々木投手の球威のほどが伝わってきたという。
 同店の松本正弘さん(51)=高田町=は「気仙からプロ野球選手が輩出されることはうれしく、とても誇らしい。プロの世界で経験を積んで、さらに上のステージを目指してもらいたい。佐々木君の活躍をきっかけに、野球にとどまらず気仙のスポーツがより盛んになっていくことを願っている」と期待を寄せる。
 東日本大震災直後、佐々木投手の家族と親せきらは住田町世田米の住宅に避難。当時、この近くで豆腐店を営んでいた泉田幸子さん(67)は、「大勢で避難していたので、少しでも何か食べさせたかった」と、豆腐やおからを差し入れた。
 「朗希君たちは、家の中ではおとなしくしていた印象。震災の話はせずに『いっぱい食べてね』などと、声をかけたのを覚えている」と泉田さん。「当時は、まさかプロ選手になるとは思っていなかったが、高校野球で活躍した新聞記事を切り抜いたりして、陰ながら応援していた。けがをせず、家族を大事にしながら活躍してほしい」と願う。
 保育園園長の小笠原由美さん(59)=陸前高田市高田町=は「気仙の人がこうして大注目されるのはやはりうれしい」と喜び、「佐々木選手もつらい思いをしたと聞くが、震災を乗り越えた経験は厳しいプロの世界でも生きると思う。大きな舞台で挑戦を続けてほしい」とエールを送る。
 佐々木投手の兄の琉希さん(21)=宮城県在住=は、テレビ中継でドラフトの行方を見守った。「身近でプロになった人がいなかったので、地元から、しかも弟がプロになるというのは不思議な感じだが、指名されるまでの過程を見てきているので、努力が実を結んだことをうれしく思う。チームメートや指導者にも支えられて今があるので、感謝の気持ちを忘れず頑張ってほしい」と語った。
 幼いころから兄弟で野球に汗を流してきた。「今はもう朗希の球は打てない」と笑い、「弟は最初からすごかったわけではない。努力すれば変われるということを学ばせてもらった。球団の柱として戦える選手になってほしいし、日本代表など高い目標も持ってほしい」と背中を押す。落ち着いたころを見計らって、祝福のメッセージを送るという。