卒業生が作詞した曲『坂を登れば』、合唱で発表 大船渡中生があすの文化祭で
令和元年10月26日付 7面

大船渡市立大船渡中学校(石橋和彦校長、生徒157人)の文化祭は27日(日)、同校で開かれる。この中で生徒らは、同校の昭和42年度卒業生らが作った合唱曲『坂を登れば』を発表。地元を離れながらも、東日本大震災で被災した故郷を思う卒業生たちの思いが詰まった一曲で、本番成功を誓う生徒らが練習に熱を入れている。
『坂を登れば』は、今年で満67歳となる同年度卒業生らの会「舫(もや)いの会」(里神淳代表幹事)のメンバーで、同会名古屋支局長の菊池文雄さん=愛知県在住=が作詞したもの。歌詞は4番まであり、「坂を登れば見えてくる 船が行き交う 静かな港」という、高台の校舎から見おろした大船渡湾の景色や、学校で同級生と過ごした幸せな日々などがつづられている。
会名の「舫い」とは、船を岸壁につなぎ止めるロープを指し、同級生同士の強い絆を表しているという。
関東を中心に全国各地に支部がある同会のメンバーは、東日本大震災で被災した古里の復興を応援し、被害状況や仲間の近況を会報で紹介。この中で、2年前の会報に掲載された菊池さんの詩が反響を呼び、作曲のきっかけとなった。
菊池さんが、作曲用に改めて歌詞を書き直したものが『坂を登れば』。同校の43年度卒業生でピアニストの桑原裕子さんを通じ、多様なジャンルの作・編曲を手がける音楽家・松波千映子さんが曲をつけた。
同曲は昨年7月、母親が大船渡市出身のシンガーソングライター・山田タマルさんが、盛町で開いたコンサートで歌ったのが初演。その後、3部合唱用にアレンジされ、今年8月に桑原さんが同校で開いた演奏会で生徒と共演した。
文化祭での全校合唱披露は、同会の「昭和からつながってきた母校への思いを、令和に生きる生徒たちに歌い、発信してもらいたい」との思いがかない、実現したもの。大先輩の情熱に触れた生徒らは、音楽を担当する馬場志保教諭の指導のもと、毎日の練習に臨んでいる。
文化祭当日は、午前中に郷土芸能披露が行われ、午後に合唱コンクールが開かれたあと、閉祭式で『坂を登れば』など合唱曲2曲を発表。会場には舫いの会のメンバーも多数来場する予定という。
合唱委員長の金野美音さん(3年)は「曲は明るい印象で、歌うときは笑顔を意識している。本番では、曲を作っていただいた先輩方への感謝を伝えたい」と力を込める。
小林友香生徒会長(同)は「歌詞につづられているのは、当時の先輩方が見た風景だが、今私たちが見ている風景と変わらない。初めて歌詞を見たとき、昔も今も、大中の良さは同じということに感動した」とし、「ほかの学校にはない、大中だけの貴重な曲。今後も歌い続けられていくことを願いながら、文化祭では楽しく歌う姿を会場に届けたい」と意気込んでいた。