「総仕上げ」意識し意見交換 復興計画推進委 大船渡

▲ 市復興計画の主な事業における9月末現在の進ちょくが示された推進委

 大船渡市復興計画推進委員会(委員長・塩崎賢明神戸大名誉教授、委員20人)は29日、盛町のシーパル大船渡で開かれた。この日は、市当局が9月末現在における市復興計画の進ちょく状況を説明。事業費ベースでの進ちょく率は90・9%となり、防災集団移転促進事業(防集)や仮設住宅の入居戸数、被災跡地の利活用状況などが示された。また、復興計画期間が令和2年度で終了するのに合わせ、検証作業に関する協議も。委員らは復興の総仕上げも意識しながら意見を交わした。

 

9月末の進ちょく90・9%

 

 同委員会は、市が東日本大震災後に策定した復興計画(平成23年度~令和2年度の10年間)の円滑な推進を図ろうと、各種施策の進め方などを協議する機関。この日は委員16人が出席した。
 戸田公明市長、塩崎委員長のあいさつに続き、当局が▽全般および復興計画事業(主要事業)スケジュール▽防集▽土地区画整理事業および津波復興拠点整備事業▽災害公営住宅等の被災者支援▽被災者に対する相談や見守り等の各種支援▽移転跡地利用計画▽復興記録誌の作成──の7項目を報告。「復興計画事業全般における課題等の整理と復興の方針ごとの評価のとりまとめ」に関する協議も行った。
 報告のうち、復興計画登載事業の進ちょく状況をみると、全256事業のうち実施済みは143事業、着手済みが113事業で、検討中と未着手はゼロ。今年3月末時点と比較して、着手から実施済みに移ったものは産業用地整備と林道整備の2事業となった。
 投入された事業費3763億8900万円に対し、令和2年度までの概算事業費は4139億4200万円で、事業費ベースでの進ちょく率は90・9%。決算見込みで算出した3月末現在から0・4ポイント減った。
 市内21地区32団地に366区画が整備された防集事業は、357区画(譲渡342区画、賃貸15区画)が引き渡され、空きは9区画。市は今年12月末まで、被災者を対象に空き区画の移転希望者を募っており、来年1月以降には一般も含む公募に切り替える方針。
 仮設住宅の入居状況は9月末現在、住田仮設を含むみなし仮設11戸で被災者らが生活。この多くが県内陸部に整備される災害公営住宅への入居を希望しており、特定延長の再々延長で令和3年3月まで入居が認められた世帯は5戸となっている。
 被災者に対する相談、見守り等については、▽パーソナルサポート支援(伴走型の生活再建支援)▽生活支援相談員による支援(災害公営住宅入居者等の見守り・相談、サロン活動や自治会支援活動など)▽高齢者支援(介護保険制度の介護予防把握事業としての戸別訪問)▽健康支援(健康見守り訪問や健康運動教室、食生活改善交流会等の実施)──を展開。関係機関、各支援が連携しながら取り組みを進めている。
 大船渡町の大船渡駅周辺地区における土地区画整理事業では、土地の利活用に向けたマッチング事業を推進。3月からは市ホームページに土地情報(賃貸・売買希望)を公開しており、9月末現在の登録者数は地権者27人、32筆で、総面積は1万1982平方㍍。これまでに売買2筆(373平方㍍)、賃貸1筆(505平方㍍)の成約があった。
 9月末現在、土地の利用済みは住宅が27筆1万2163平方㍍(6%)、店舗が121筆12万3038平方㍍(57%)、住宅兼店舗が20筆2733平方㍍(1%)、その他(駐車場など)は51筆1万4856平方㍍(7%)。予定は、住宅が8筆1981平方㍍(1%)、店舗が33筆1万3208平方㍍(6%)、住宅兼店舗が1筆89平方㍍(0%)、その他は5筆1506平方㍍(1%)。
 未定は126筆4万4041平方㍍(21%)で、このうち津波復興拠点整備事業区域の⑦街区(1筆3503平方㍍)を除いた分は、125筆4万538平方㍍(19%)。3月末現在と比べ、5筆1827平方㍍、1ポイント減少した。
 9月末現在の被災跡地(防集買取地)の譲渡・貸し付け状況は、買取予定地が847筆25・4㌶で、買い取り済みは829筆24・6㌶(96・8%)。赤崎地区のスポーツ交流ゾーンの用地追加により、3月末現在から買取予定地が0・7㌶増えた。
 譲渡、貸し付け、事業で活用されている土地は359筆10・2㌶で、公募や調整中の未利用・未活用の土地は486筆14・4㌶。このうち、貸付は復興関連工事の終了に伴い、1・5㌶減った。
 協議では、3年3月末で復興計画が終了するのを受け、同時期に発行予定の記録誌にも掲載する「復興の方針ごとの評価」について、当局が示したたたき台をもとに意見を交換した。
 委員からは「被災直後からの1、2年における近隣市町村との連携状況、高台移転等の苦労なども記しては」「課題といっても、復興計画期間内にやらなければならないものと、計画終了後も残るものがあり、分けて記載する必要がある。今後見直しをする際に意識してほしい」「多くの人が住宅再建できたというまとめ方ではなく、防集や災害公営住宅整備での工夫を見せることも必要では」などの提言が寄せられた。