柔道の縁、これからも プロジェクト「海の道」が終了 五輪金メダリストら気仙訪問(別写真あり)

▲ 時習館を訪れた佐々木さん(右側中列の右から2人目)ら海の道の関係者と道場生ら

 東日本大震災以降、大船渡市とフランスの青少年柔道家の交流を後押ししてきたプロジェクト「海の道」が、今年で活動を終了する。10月30日からは、プロジェクト代表で、五輪金メダリストの佐々木光さん(52)=仏・ブルターニュ地方在住=ら関係者が気仙両市を訪問。同日夜には、親睦を深めてきた大船渡市の時習館道場の子どもたちとも対面し、「プロジェクトが終わっても、この縁がずっと続いていくように」と願い合った。

 

大船渡とフランスの交流事業

 

 静岡県沼津市出身の佐々木さんは、昭和63年のソウル五輪女子66㌔以下級で金メダルを獲得。現在は、ブルターニュ地方で柔道教室を開いている。
 佐々木さんは、師の根木谷信一さんや、大船渡市出身の柔道家・宮﨑康洋さんとともに「大船渡の少年柔道家を励まそう」と、平成24年に大船渡高校で開かれた柔道講習会に参加。この際、戸田公明市長から「未来を担う子どもたちに外の世界を見せてあげてほしい」と話されたことが、大船渡柔道家日仏友好交流プロジェクト「海の道」をフランスの仲間たちと結成するきっかけとなった。
 海の道ではこれまで、募金活動やチャリティーイベントの開催、手作り品の販売などを展開。集まった支援金を活用し、27年には時習館の道場生10人をフランスに招待。29年にはフランスの柔道生を大船渡に派遣した。
 青少年柔道家の海を越えての相互交流を果たした同プロジェクトは、惜しまれながらも今年限りで終了することとなった。今回、海の道に携わった佐々木さんら仲間10人余りが、大船渡の関係者にあいさつしようと来日した。
 30日は、時習館道場を運営する大船渡市柔道協会(黒田喜一会長)が佐々木さんらを歓迎。一行は、陸前高田市の震災津波伝承館(いわてTSUNAMIメモリアル)や奇跡の一本松などを見学したあと、同道場を訪れて道場生らと交流した。
 佐々木さんは、道場生の練習に参加したり、投げ技「膝車」の稽古を行うなどして子どもたちと笑顔を交わした。道場生が投げの型の演武を披露する場面もあり、復興へ向かう被災地で元気に柔道を続けている姿を発信した。
 4年前、高校生のときにフランスに渡った生形幸誠さん(21)=赤崎町=は「ホームステイ先の人たちが、フランス語が話せなくても自分たちを温かく迎えてくれたのを今でも覚えている」と振り返り、「こうして支援していただいたことに感謝。フランスで何かあったとき、今度は自分たちができる支援をしたい」と力を込めた。
 佐々木さんは「私たちにできることを手探りで探し、ここまで活動することができた。プロジェクトは終わるが、大船渡のことはこれからも応援し続けたい。旅行などでフランスに来る子どもたちがいたら、ぜひまた一緒に柔道をしましょう」と、縁の発展を願っていた。
 佐々木さんら一行は、31日に大船渡市役所を表敬訪問。11月1日に同市を出発して各地を巡り、6日(水)には日本をたつ。