越小校門の物語を後世に カレンダーを販売、売上金で紙芝居制作へ 大船渡

▲ 「石の校門物語」に関連する資料を展示し、紙芝居制作に向けたカレンダーのチャリティー販売を実施中

 大船渡市のNPO法人おはなしころりん(江刺由紀子理事長)による「石の校門物語(越喜来)展と2020年カレンダー販売」は、17日(日)まで大船渡町のおおふなぽーと(防災観光交流センター)で開催中。市民有志の思いを受け、昭和初期に三陸町越喜来の住民らが設置した越喜来小学校校門の物語を紙芝居にしようと、物語のあらすじなどを展示。会場ではカレンダーのチャリティー販売も行っており、売上金を紙芝居の制作費用に充てる。
 「石の校門物語」は、昭和6年に設置された越喜来小学校校門の史実を描いたもの。あらすじによると、当時の越喜来消防団浦浜分団長が山林で見つけた巨石を「越喜来小の校門にしよう」と発案し、同消防団を中心に村民一丸となって設置にこぎ着けたという。山から石を運び出す作業には、延べ300人以上の村民らが参加し、4日間かけて運んだと伝わる。
 完成した校門は約80年にわたって地域の子どもたちを見守ってきたが、平成23年の東日本大震災で校舎とともに被災。その後、28年に高台に移転した新校舎の門として設置され、今もその姿を残している。
 おはなしころりんはこれまで、市内の民話を題材にした紙芝居を制作。今回、越喜来出身の斎藤陽子さん(立根町在住)と、元越喜来小・越喜来こども園建設委員会長で地元在住の坂本光博さんが「『石の校門物語』を後世に伝えるため、紙芝居にしてほしい」と依頼。㈲大船渡印刷(イー・ピックス、熊谷雅也代表取締役社長)の協力を得てカレンダー販売を行い、売上金で紙芝居を制作することとなった。
 会場では、「石の校門物語」のあらすじや関連資料、斎藤さん、坂本さんのメッセージなどを紹介。斎藤さんは「みんなの力が大きいことを子どもたちに教える見事な教材であり、この石の校門がどうして越喜来小に立っているかを知ってほしい」と、坂本さんは「〝子を思う親の心〟がいつの世も変わらぬように、地域の人たちの『学校のためならば…』という思いも変わらない」などと物語への思いを寄せている。
 会場では、同社から提供を受けたカレンダー300部を展示、販売。カレンダーの価格は100円、300円、500円の3種類。
 会場には市民らが足を運び、地域の史実を次世代に残したいとする市民たちの思いを理解。お気に入りのカレンダーを見つけて購入する人もあった。
 5日に来場した同町越喜来の熊谷喜左衛門さん(74)は、「校門を設置した浦浜の分団長が私の祖父・長左衛門で、生前に当時の話をしてもらったことがある。石を運ぶために山の木を切って使ったとか、職人10人ぐらいが家に泊まりながら石を削ったと聞いている」と話し、「小学生のころは校門を通るのが誇らしかった。紙芝居になると聞いてうれしい」と笑顔を見せた。
 江刺理事長(57)は「物語に込めた市民の方々の思いを何とか紙芝居として実現したい」と話し、来場と協力を呼びかける。紙芝居は本年度内におはなしころりんが制作し、来年春には初披露する予定としている。