「耕畜連携」推進に手ごたえ 飼料用トウモロコシ収穫 遊休農地活用に向け実証 住田町(別写真あり)

▲ 水分含量が25%前後にまで下がったトウモロコシを収穫

 住田町が栽培実証を進める、遊休農地を活用した飼料用のトウモロコシ収穫が5日、上有住の実証地で行われた。町内農業生産額のほとんどを占める畜産分野のさらなる振興と、遊休農地の有効利用を図る「耕畜連携」の一環。気仙では初の取り組みとされ、関係者は実の付き加減やスムーズな収穫に手ごたえを得るとともに、さらなる収量増や飼料への意識を高めていた。

 

地元養豚場で活用

 

 収穫作業が行われたのは、これまで水田として利用された上有住両向の民有地0・7㌶。町に加え、実証を委託している㈲ありす畜産、事業に協力しているヤンマーアグリジャパン㈱北東北営業部岩手ブロックの関係者ら10人余りが立ち会った。
 刈り取りに先立ち、トウモロコシの子実の水分含量を調査。28%以下が適しているとされる中、計測では24・8%となり、順調に乾燥が進んだことを確認。葉がほとんど枯れ、黄色の実が付いた農地の中に、先端部に特殊な刈取設備を付けた汎用コンバインのエンジン音が響き渡った。
 作業に立ち会った同社岩手ブロックの金野和文専任部長は「初めての栽培としてはうまくいっていると思う。住田でも生産できることを示したのでは」と話した。
 収穫された子実は、ありす畜産が所有する乾燥機でさらに水分含量を下げ、粉砕後は豚の飼料となる。乾燥から粉砕までの作業は数日で終わり、今週末には利用できるという。
 町内の農業産出額は約50億円で、このうち畜産が90%超を占める。豚や鶏に与える濃厚飼料の多くは輸入に依存し、国際情勢の影響を受けやすいとされる。
 近年、栄養価の高い子実だけを収穫するトウモロコシの国内栽培が徐々に拡大。連作障害を防ぐといった利点もあり、農地保持の面からも注目を集めている。
 一般的にトウモロコシの子実は、飼料米よりも1㌶あたりの収量が多く見込める。さらに、生産者の作業時間も水稲や大豆、小麦に比べても大幅に少なく、効率的な農地利用が期待できるという。
 このため、年々拡大している遊休農地の活用が見込める。町は、地元の養豚・養鶏にも〝顔の見える〟飼料を提供できる点にも着目し、本年度から実証試験に着手。気仙では例がないという。
 本年度は両向に加え、牧草地だった上有住新田の町有地約3㌶で実証栽培に着手。今年4月の土壌分析などを経て、6月に両向では約5万6000粒、新田では約21万粒の種をまいた。
 電柵を施すなど、鳥獣被害対策も進めた結果、いずれの農地も順調に実が付き、収穫期を迎えた。新田での刈り取りも、今月中に行われる見込み。
 今後は収益性の検証や、さらなる収量増に向けた分析などを行う計画。町の紺野勝利農政課長は「町内の遊休農地を有効に利用することができれば。きちんと栽培結果を確認し、今後どういう風に取り組めば活用につながるかを考えていきたい」と話す。
 トウモロコシ栽培は、養豚事業者側では豚糞の堆肥活用といった利点もある。ありす畜産の水野雄幸社長は「これまでは輸入頼みで、いつかやりたいと思っていた事業であり、感無量。育てることで堆肥利用も含めた一つのサイクルが生まれる。10㌃あたり1000㌔の収穫が目安とされるが、今年はそこまでは届かないと思う。来年以降も続けて、収量を増やしたい」と意気込む。