末崎のいわて銀河農園 トマト出荷、順調に推移 大船渡(別写真あり)

▲ 大規模園芸施設内で生産されたトマトを収穫

収穫したトマトは「天然水トマト」として関東圏に出荷

 大船渡市末崎町の㈱いわて銀河農園(橋本幸之輔代表取締役)が同町小河原地区内の被災跡地に整備した大規模園芸施設内で、トマトの生産、出荷が行われている。施設内には中玉品種の苗約2万株が定植されており、8月初旬には収穫と関東圏への出荷を開始。生産、出荷は順調に推移しており、今後は地元スーパーなどへの出荷も見据えている。

 

被災跡地の園芸施設で生産

地元への出荷も見据える

 

 いわて銀河農園は、山梨県の㈱サラダボウルと紫波町の㈱銀河農園が平成28年に設立。サラダボウルのグループ会社でもある。
 大船渡市が東日本大震災後に防災集団移転促進事業で買い取り、産業用地として整備した被災跡地(面積約3・2㌶)を借り受け、大規模園芸施設を建設。鉄骨造り平屋建てのビニールハウス(栽培面積1・5㌶)や管理棟(0・17㌶)で構成し、今春完成した。総事業費は約7億円で、およそ半額は国の補助事業を活用している。
 ハウスには室内の温度や湿度などを調節し、栽培に理想的な環境を管理する複合環境制御栽培システムを導入し、養液栽培によるトマトの通年生産を実施。栽培養液をリサイクルする完全循環型設備も取り入れ、環境にも配慮している。
 施設完成後はトマト生産に向けた準備を進め、6月27、28の両日に苗を定植。市場のシェア数がまだ少なく、出荷先からのニーズもあるという中玉(重さ45~50㌘)の「カンパリ」(オランダ原産)を生産し、8月2日からサラダボウルのブランド名「天然水トマト」として、関東圏の大型スーパーに出荷している。カンパリは、生食でも加熱してもおいしく食べられる品種だという。
 被災跡地を活用した広大な施設内には、3㍍前後に成長したトマトの苗がズラリ。現在はパート34人を含む約40人が勤務しており、高所作業機も用いながら赤く色づいたトマトの収穫や苗の管理、出荷用の箱詰めなどを行っている。
 8~10月の出荷量は合わせて約115㌧。計画以上、あるいは計画通りで推移しており、現在は毎週月、水、金曜日に出荷作業を行うサイクルで進めているという。年間出荷量は、525㌧を見込んでいる。
 いわて銀河農園は、先月下旬に開かれた市産業まつりにも出展。事業内容の紹介や生産するトマトの試食などを行い、市民らの関心を集めた。同社の櫻田伸介取締役事業所長(37)は「『どこで買えるのか』との話もあり、皆さんの関心の高さを感じた」と振り返る。
 同社では今後、生産状況をみながら地元のスーパーなどにもトマトを出荷していきたい考え。第2ほ場の整備も検討中といい、より安定した生産に向け、一層の体制強化も図っていきたいとしている。
 櫻田事業所長は「日本にない技術も生かしながら、トマトの生産を進めていく。また、出荷状況などに合わせた短時間労働のメリットを生かし、フルタイムで働けない方の雇用の場としても地元の役に立っていきたい」と話している。