アニメの仕事を先輩に学ぶ 菅野さんが講師に住田高校で「かたらっせん」(別写真あり)

▲ アニメキャラクターを描くなどして交流した菅野さん(右端)

 住田町教育委員会が県立住田高校(菅野誠二校長、生徒89人)の研修会館内に開設している「住高ハウス○○」で5日夜、同校出身のアニメーター・菅野宏紀さん(54)=東京都在住=を招いた「かたらっせん」が開かれた。『鋼の錬金術師』『文豪ストレイドッグス』をはじめ数々の人気作に携わった菅野さんは、生徒の前でアニメキャラクターを描くなどして交流。好きなことを仕事にするやりがいも伝えながら、後輩たちの飛躍にエールを送った。

 

キャラクターの描画も

 

 町教委は昨年10月から、生徒たちが放課後にゆったりと過ごせる場を確保しようと「住高ハウス○○」を運営。授業や部活動後のバスを待つ間に自習したり、就職や進学に関する相談を行う生徒らが多く訪れている。
 さらに、月1回程度のペースで、社会人を講師に招く「かたらっせん」も開催。気仙で生活し、仕事に就くやりがいなどを学び取る機会も設け、好評を博している。
 これまでは町内在住者が多かったが、今回は都内で活躍する菅野さんを招いて開催。部活動の時間などに合わせて2部制で行われ、アニメが好きな生徒や地域住民ら合わせて約30人が訪れた。
 菅野さんは下有住出身で、住田高校を卒業後、東京デザイナー学院に進学。中退後の昭和60年からアニメ業界に入り、現在もアニメーターとして活躍している。これまで作画監督として『幽☆遊☆白書』『文豪ストレイドッグス』、原画では『新世紀エヴァンゲリオン』、アニメーションキャラクターデザインでは『鋼の錬金術師』などにかかわってきた。
 講演は町教委の教育コーディネーターとの対談形式で行われ、菅野さんが企画から放送まで多くの人々がかかわるアニメ制作の流れや、長年担ってきた原画の仕上がりをチェックする作画監督の仕事について解説。「業界に入ってすぐに作画監督のまねをさせてもらったが、1本目は失敗が多かった。どうすればいいか試行錯誤をしながら2本目に取り組み、多くを学んだ」と振り返った。
 住田で過ごした中高生時代から絵を描くのは好きだったといい、「手がけたキャラクターが『好き』と言われればうれしいし、思った通りにキャラクターが動いてくれると『よしっ』と思う」「進みたい道が決まっているなら、早めに動き出した方がいい」とも語った。
 講演の間には、生徒たちの要望に応じて『文豪ストレイドッグス』内のキャラクター・太宰治を鉛筆で描く時間も。スマートフォンで動画を撮影しながら見守った生徒の中には、「すごい!」「やばい!」と声を上げながら感動で涙を流す姿も見られた。
 このほか、生徒自らが描いたイラストの紙を見せ、助言を求める光景も。母校の先輩からアニメーターの仕事を身近に感じるとともに、好きなことを仕事にするやりがいや魅力を学び取った。
 1年生の窪田藍子さんは「自分が好きな作品の仕事にかかわっていて、びっくり。学校や住田の誇り。講演を聞いて、今から基礎的なことを学び始める大切さも知ることができた」と話していた。