ロンドン大学教授が陸前高田市内を視察、震災の教訓など学ぶ(別写真あり)

▲ 東日本大震災津波伝承館を視察するアレキサンダー教授

 英国・ロンドン大学リスク防災研究所のデヴィッド・アレキサンダー教授(67)が6日、陸前高田市を訪問した。本県や宮城県でのフィールド調査の一環で、同市役所や東日本大震災津波伝承館、障害者就労継続支援事業所を視察。震災からの復旧・復興の状況や伝承方法、災害弱者への対応に理解を深めた。
 アレキサンダー教授は、物理地理学や自然災害学などを専門とする地震・防災研究者。文献も数多く執筆しており、専門誌「国際災害リスクジャーナル」の創設者兼編集長でもある。
 今回、同教授は4日から6日までの2泊3日の日程で、震災で甚大な被害を受けた岩手・宮城両県を訪問。山田町、大槌町、宮城県気仙沼市を回り、三陸鉄道にも乗車した。
 最終日の6日は、陸前高田市役所と東日本大震災津波伝承館、高田町の就労継続支援B型事業所・あすなろホームを視察。
 このうち、震災津波伝承館では熊谷正則副館長が館内を案内。地球の活動と地震・津波や繰り返す津波の歴史、東日本大震災の概要について説明し、震災当日の映像や被災した田野畑村の消防団車両といった展示物を紹介しながら、津波の恐ろしさを訴えた。
 また、地震発生時の各地の状況や政府の初動体制、避難所の様子、自衛隊や消防の捜索活動、当時の避難行動を振り返るコーナーも回るなどし、避難の大切さや防災のあり方も学んだ。
 館内の視察を終え、アレキサンダー教授は「何のために造られたかが明確に分かり、さまざまな情報が展示されている素晴らしい施設。私たちが震災から学ぶべきことがよく分かる」と印象を語った。
 欧米では災害に関するミュージアムが少ないといい、「今まであまりこういったものを見たことがなかったが、プロパガンダのような押しつけではなく、自ら考えることができる」とアレキサンダー教授。「安全ということに、シリアスに向き合わなければならないと感じた。いろいろな事実を真摯に証言していることが素晴らしい。ここに来られたことを心から感謝したい」と話した。
 長年、災害に関するリサーチをしながら教育に携わっているというアレキサンダー教授。今回の来日で得たものを授業で学生たちに伝えるとともに、平成25年から共同で研究している東北大学災害科学国際研究所とさらに研究を進め、国際的な防災に生かしていきたいとしている。