レーザー光照射の効果実証 サルなどの食害対策で 住田(別写真あり)
令和元年11月13日付 7面
農作物へのサルの食害が後を絶たない住田町世田米中沢地域で、レーザー光照射による害獣撃退装置の効果実証が行われている。精密部品加工などを展開する宮城県岩沼市の小野精工㈱(小野和宏社長)が開発し、大船渡市に本社を置く橋爪商事㈱(橋爪博志社長)が橋渡し役となって設置。サルだけでなくクマやシカにも効果が期待されるほか、小規模農地でも設置がスムーズにできるといった利点もあり、今後の広がりが注目される。
小野精工と橋爪商事が世田米の被害畑に設置
鳥獣被害対策では近年、農地を囲う電気柵設置が進む。しかし、サルは電流が流れていない支柱を登って侵入するほか、山地では畑の近くに伸びる木々の枝をつたって農地に入り、被害をもたらすことも多いという。
中沢地域では、今年夏から秋にかけて甚大なサル被害に見舞われた。住家から離れた畑では、カボチャが持ち去られるなどしてほぼ全滅の被害だったといい、住民から町に相談が寄せられていた。
こうした状況を受け、橋爪商事と小野精工が試験実証に動き、世田米字上城の吉田スズ子さん(78)が管理するニンジン、ダイコン畑に9月下旬から設置。例年、ニンジンの根部分はサルに、葉はシカの被害に遭っている。
目を守る害獣の習性を生かし、農地に24時間レーザー光を広範囲に照射して撃退を図る構造。数年前に開発され、県内での実証は今回が初めてという。
約10㌃の農地に2台を設置。太陽光パネルで発電し、蓄電池を電源として自動的に発光する仕組みで、維持・管理作業はほとんど必要とせず、先月の台風襲来時にも倒れなかった。
設置後、畑近くでは複数のサルが移動していたことが確認された。それでも吉田さんは「例年はニンジンがよく被害に遭うが、今年は少なかった」と話す。
12日は小野精工の小野社長や橋爪商事の平洋規執行役員、町農政課職員らが設置現場に出向き、農地の状況などを調査。ニンジンの収穫が終わる12月上旬まで設置することにしている。
この装置はクマやシカに加え、近年全国的に増えているイノシシの被害対策としても注目される。移動させやすく、果樹などを含めた作物の生育時期などによって設置場所を変えられる利点もある。
小野社長は「実証実績を生かし、さらに改良を重ねたい」、平執行役員は「少子高齢化にも対応した被害軽減策の一つとして確立されれば」とそれぞれ語り、装置活用に期待を込める。
町農政課では「鳥獣被害対策は、町全体として取り組んでいかなければならない問題。どのような普及が効果的かや、設置対象がどうあるべきかなどを引き続き検討したい」としている。